メンタル

職場の「心理的安全性」が低いとうつ病のリスクが3倍になるぞ!というコホート研究のお話

「働きすぎで寿命が縮んでる人が増えているぞ!」とか「労働時間が長くなるとポテンシャルを最大限発揮できないぞ!」とか、とかく長時間労働の害が取りざたされている昨今。

そんな中今回は、「メンタルをやまないためには労働時間よりも『心理的安全性』のほうが大事なんじゃない?」って結論のデータ(R)が出ていて面白かったです。



職場の「心理的安全性」が低いとうつ病のリスクが3倍に!?

これはみんな大好きBMJに載ってた新しい研究で、オーストラリアの週35時間以上フルタイムで働いている精神的に健康な大人1,084人を対象にしたコホート研究になっております。まずは研究チームの問題意識からどーぞ。

最近の文献では、職場の環境が長時間労働やその後の鬱症状の発症にどう影響を与えるのかを調べた人口ベースの前向きコホート研究はない。

職場の環境、特に職場の社会心理的なリスクの指標となる「心理的安全性」は臨床医による効果的な介入の対象となったり、大うつ病の新たな症状を予防するためのポリシーメイカーとなり得ることから、この関係を理解することは重要である。


これまでは長時間労働とメンタルの関係を調べた研究は横断研究のものが多かったけど、実際は経時的な関係こそ本質なのだ!ってわけですね。

ご存じの方も多いでしょうが、一応「心理的安全性って何?」って点を確認しておくと、

  • 職場で罰や批判を受ける心配をしたり不安を抱えたりすることなく、誰にでも、なんでも言えるという感覚


くらいの意味。本研究ではちょっとニュアンスが違うんですが、まあ大体同じと言っていいでしょう。

この「心理的安全性」は数年前にGoogleが「互いを信頼しあい、対人関係上のリスクをとっても安心できる」ような雰囲気のあるチームこそが高い成果を上げるのだ!「心理的安全性」がチームのパフォーマンスを高めるのだ!っていうのを発表したことでも話題になりました。

で、今回の研究に話を戻すと、対象者の

  • 労働時間
  • 心理的安全性
  • 仕事へのエンゲージメント


などを調べて、12か月後のうつ症状の発症との相関を分析したんですな。

なお、労働環境中の心理的安全性を評価するにあたっては、参加者に以下のような質問に回答してもらったそう。

  • 社員に心理的な問題が生じたとき、上司は真剣に向き合ってくれるか?
  • 上司は部下のメンタルヘルスを生産性と同じくらい重要視しているか?
  • 心理的安全性の問題について部下と上司の間でコミュニケーションが行われているか?
  • 労働者は心理的安全性を大事にするように言われているか?


また、うつ症状の評価にはPHQ-9っていううつのプライマリーケアとかでよく使われる指標が使われたみたい。





大事なのは労働時間よりも心理的安全性だ!

でもって、いろんな諸要素を調整してわかった結果を箇条書きにするとこんな感じ。

  • 全体的に見れば、労働時間はうつの発症率と有意な相関は見られなかったが、軽度の症状を除いた場合には、週に41~48時間、55時間以上働いているグループで鬱症状と正の相関がみられた。

  • 心理的安全性の高さと12か月後のうつのリスクの間には負の相関がみられた(OR=0.32)

  • 心理的安全性と労働時間との間に有意な相関は見られなった

  • 心理的安全性とうつリスクの関係は女性よりも男性のほうが顕著だった

  • エンゲージメントとうつリスクとの間に有意な相関は見られなかったが、エンゲージメントは長時間労働と有意な関係がみられた


だったそう。やはり言及すべきは、「心理的安全性が低いと1年後のうつリスクが3倍になる!」って点でしょうな。

労働時間とうつリスクの関係に関しては本研究だけを見てもモデルによって結構ばらばらだし、過去のメタ分析なんかを見ても結論が真逆だったりするんで、メンタルに良くない職場という観点から見ると、労働時間よりもまず心理的安全性を優先的に考えた方がいいのかもしれません。

とはいえ、この研究では

  • ベースラインの時点でうつ症状を報告した人は分析から除外している
  • 労働時間は直前の週のものしか調べてない
  • 在宅ワークだと労働時間を正確に定義できない


って点を考慮すると、労働時間とうつリスクの関係は過小評価されている可能性もでかいんで、単純に「労働時間は長くてもいいんや!」とはならないんで、ここら辺はご注意いただければと。



まとめ

研究チーム曰く、

この結果は、職場における高い心理的安全性が将来の大うつ病の症状を予防する可能性があることを示唆している。

心理的安全性が労働時間よりも強い影響を示した理由は、心理的安全性が仕事の様々なストレス要因とかかわりあっているためと考えられる。

これまでの研究によると、心理的安全性の低さは、仕事のプレッシャー、仕事量、心理的要求、職場でのいじめや嫌がらせ、(高い要求と低いコントロールという形で)仕事での緊張など、ストレスの多い職場の社会心理的要因を予測する。

とのこと。

そんなわけで社員のメンタルについて配慮してくれない会社にいる場合には、メンタルのためにも最大限ポテンシャルを発揮するためにも転職とかを考えた方がいいのかもしれませんねー。

参考になれば幸いです。質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです。

それではっ!

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