リモートワークのような新しい働き方が当たり前になってきていて,フレキシブルな仕事をする人が増えている昨今.
ただ,リモートワークが必ずしもいい影響ばかりでもないし,どのくらいの時間働くかとかもある程度個人の裁量が大きかったりということもあって,オフィスワークの場合と同様,自分のポテンシャルを最大限発揮することは容易ではなかったりするわけです.
そこで,「プレゼンティーイズム」と呼ばれる指標を用いて,働き方が仕事のパフォーマンスにどう影響するのか?ってことを産業医科大学が日本人を対象にして調べてくれておりました(R).
プレゼンティーイズムってのは,「アブセンティーイズム」の対比で使われることが多くて,それぞれこんな感じの意味があります.
- アブセンティーズム:健康問題等による欠勤,休職の状態
- プレゼンティーイズム:出勤はしているけど,心身の不調のせいで労働遂行能力が低下している状態
といった感じ.アメリカの調査なんかを見ると,プレゼンティーイズムによる企業の損失はアブセンティーズムによる損失や医療費よりも大きいという報告があったりして,プレゼンティーイズムは結構重大な問題だったりするわけです.
で,当研究では,労働時間だったりリモートか否かみたいな要素がこのプレゼンティーイズムにどう影響を与えているのか?って点が調べられたわけです.
これがどんな調査だったのかと言いますと,
- 日本の幅広い地域のサービス業の会社に勤める労働者21,500人のデータを集める.
- 対象者のプロファイル,出勤状況,プレゼンティーイズムのレベル等を測定する.
- これらの相関関係を調べる.
みたいな感じ.プレゼンティーイズムの測定にはWLQっていう指標が使われてまして,これは睡眠障害だったりメンタル的な疾患の社会的な影響を定量的に評価するために,医学とか健康の分野でよく用いられていたりします.
具体的には,
- 時間管理
- 身体活動
- 集中力・対人関係
- 仕事の結果
という大きく分けて4つの下位尺度に分かれる調査らしくて,日本語版も開発されているみたいなので気になる方はチェックしてみてください.
それで,調査の結果どんなことがわかったかと言いますと,
- 参加者の週の平均労働時間は37.7時間だった.
- 週の労働時間が35時間以下の人はそれ以上の人に比べてWLQのレベルが低かった(つまり,高い生産性を発揮できていた)
- チームマネジャーの人はWLQのスコアが高く,一方シニアマネジャーやパートタイムの労働者はWLQのスコアが低かった.
- リモートで働いている人はそうでない人に比べてWLQのスコアが低かった.
だったそうです.労働時間が短くてリモートで働いている人のほうが,生産性の低下の度合いが少なく,ポテンシャルをしっかり発揮できていたみたい.
研究チーム曰く,
これらの結果は,労働時間を短くし,フレキシブルな労働環境を整備することがプレゼンティーイズムの改善につながるかもしれない.もっとも,この結果を確証づけるにはさらなる調査が必要ではあるが.
とのこと.働く時間を短くして,ある程度の裁量をゆだねることが,労働者の最大限の仕事につながるというわけですな.
やっぱりある程度当人の考えに任せて,邪魔の入らない環境で集中させてあげるのが一番大事なのかもしれませんな.
また,チームマネジャーはほかに比べて生産性が低下していたというのも面白くて,仕事においては自分でどれだけコントロールが可能かという点が結構大事になってきたりしますから,その点,チームマネジャーのような上にも下にも配慮しないといけない人はどうしても自分自身のパフォーマンスの最大化がおろそかになってしまうのかもしれないなーとか思いました.
というわけで,これからの新しい働き方の参考になれば幸いです.
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それではっ!