やらなきゃいけないことはわかっていても,なかなか目の前のタスクに手を付けられず,だらだらとスマホに手が伸びてしまうのが人情というもの.実際,スマホ中毒の人ほど先延ばしが多い!っていう研究も複数あります.
そうはいっても,「スマホをやめられないけど,先延ばしを防ぐ方法はないのか?」っていうポイントは気になります.
実際たまに,スマホばかり触っているけどなんだかんだで仕事はちゃんと期日までにきっちり終わらせる人っていますよね.そういう人と,スマホばかりで仕事も終わらせられない人の違いって何なの?ってことを調べてみれば何かヒントを得られるかもしれません.
ってことで近頃見た論文(R)では,「スマホ中毒の中でも先延ばしする人としない人とでは何が違うの?」みたいな問題を調べてくれてて参考になります.一般的に「先延ばし」というと,「意志力が欠けているからだ!」「怠け者め!」みたいになりがちなんですけど,ここでは別の原因が想定されているんですよ.
その原因というのは,最近話題の「自己効力感」です.自己効力感ってのは簡単に言うと,「成果を出すために必要な行動を選び,実行する能力が自分にはあると認識すること」みたいな感じです.自己効力感があれば,先延ばしが減るんじゃないかと研究チームは考えたのです.というのも,過去の研究から,
- スマホ中毒の人は先延ばししがち.
- スマホ中毒の人は自己効力感が低め.
- 自己効力感の低い人は先延ばししがち.
ってことがわかっていて,じゃあ,「スマホ中毒の人でも自己効力感を高めれば先延ばし減るんじゃね?」って考えたってわけっすね.
で,調査では,大学生483人を対象にして,
- スマホ中毒度合い
- 学業の先延ばし度合い(「提出物を期限に出す」とか)
- 学業における自己効力感度合い
をそれぞれチェックしました.そこで何がわかったかというと,
- スマホ中毒者ほど先延ばしが多かった.
- スマホ中毒者ほど自己効力感が低かった.
- 自己効力感が低い人ほど先延ばしが多かった.(ここまでは先行研究と同じ)
- 自己効力感を考慮してもなおスマホ中毒者ほど先延ばしが多いという傾向は確認された.
- この傾向は性別は年齢,学年等を調整してもなお確認された.
- 先延ばしに対する影響の割合は,スマホへの中毒度合い(先延ばしを促進)が約8割,自己効力感の高さ(先延ばしを防ぐ)が約2割だった.
みたいになっています.要するに,
- 自己効力感が高ければ,2割くらいは先延ばし予防に寄与するけど,スマホ中毒による先延ばしへの寄与に比べたら小さな影響かもしれない
みたいな感じでしょうか.まあ,やらなきゃいけないのにスマホを触ってしまう,という行動がより自己効力感を下げてしまっているんじゃない?みたいなことも考えられます.
研究チーム曰く,
学業上の自己効力感が高い学生はスマホ依存による学業の先延ばしは起こりづらいかもしれないが,スマホ依存のレベルの高さは,タスクの完了の遅れになお影響してくるだろう.
とのこと.先延ばし対策にはまずは自己効力感よりもスマホ依存を解消したほうが効果でかいかも,って感じですな.どうしてもスマホをやめられない場合はまずは自己効力感の向上に努めていただくのもいいかと思います.そしたら自己効力感の向上によってスマホ依存から抜けだせて,結局先延ばしも減る,みたいなことも十分期待できるんじゃないでしょうか.
「セルフコンパッションで先延ばしが減る!」みたいな報告もありますが,スマホ依存ってセルフコンパッションなんかより断然効果でかいんじゃないか…みたいにも思いました.スマホ依存の脱出にセルフコンパッションが使われたりする点を考えると,卵かにわとりか,みたいになってきますが.
なんだかまとまりがなくなってしまいましたが,とにかく,スマホが原因で先延ばしが止まらない,みたいな人は,とにかくスマホを断つよう努力する,その際に自己効力感の向上とかセルフコンパッショントレーニングとかをやってみる,ってことでよろしくお願いします。
セルフコンパッションのトレーニングには「実践 セルフコンパッション」なんかはセルフワークも充実していておすすめです.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterなどでご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!
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