「仕事がすべてにおいて楽しい!」なんてことは少ないでしょうが,どうせやるなら「やりがい」をもって仕事に励みたいものです.
そこで近年注目されているのが「ジョブ・クラフティング」であります.
これは2000年あたりから盛んに研究が行われている分野で,要は「仕事に対する見方を変えて楽しく働こうぜ!」っていう話です.
その発端として有名なのは,毎日ハードな環境で働く病院の清掃員を対象にした実験です.彼らにはジョブ・クラフティングの技法を用いて「清掃は患者の治療の一部なんだ!」「清掃は病院における”大使”なんだ!」って意識させたところ,モチベーションが爆上がりして仕事のパフォーマンスも圧倒的に向上したんだそう.
つまり,やっている作業自体は同じなんだけど,別の視点から見つめることで自分の仕事の重要性を認識できるようになって,モチベーションが上がる,というわけですな.
その効果はこれまでいろんな職種等でも確認されていて,例えば2017年のメタ分析(R)なんかを見てみても,
- ジョブクラフティングを行うことで,モチベーションが高確率で増加する!
みたいなことが確認されていたりします.
ほかにもジョブ・クラフティングはいろんなところでポジティブな効果をもたらすことが確認されていて,ざっと挙げるだけでも以下のような効用が報告されています.
- セルフイメージの向上
- 仕事上のアイデンティティの向上
- 向社会的なモチベーションの向上
- 仕事のパフォーマンスの向上
- ワークライフバランスの向上
- 時間管理がうまくなる
- 対立が減少
- 時間的プレッシャーの減少
- 社会的なサポートの向上
- 柔軟性の向上
- 自己効力感の向上
- コントロール感の向上
- 仕事に対する満足度の向上
- 睡眠障害の改善
- ストレスの改善
- 家庭内不和の改善
みたいな感じで,いろんな問題を解決してくれることも相まって,仕事のモチベーションが上がるといわれていたりするんですよね.
で,じゃあ具体的にどうやって実践すればいいの?ってことですが,結構いろんな方法があったりします.
ここではよく見る一般的な方法(R)を紹介しておきます.
1.ジョブ・クラフティングで何を変えたいのかを明確化する
このステップでは,今の仕事の状況をモニタリングして,「今自分はジョブ・クラフティングで何を改善したいのか?」を把握していきます.
まずは,作業と感情の対応を一定時間ごとに記録してみたりして,自分が不満を感じている部分をはっきりさせます.
続いて,その不満を改善するためにどんな変化をもたらしたいかを考えます.具体的には,
- タスクの内容:「もっと自分のスキルを活かしたい」「会議を短くしたい」とか
- 人間関係:「上司,同僚,クライアントとの悪い関係を改善したい」「自分の成長にもっと寄与する人と関わりたい」とか
- 目的:「仕事に対する見方を変えて仕事の満足度を上げたい」「自分の仕事が役に立っている人を想像する」とか
みたいな感じ.大体はこの3つのどれかに当てはまるはずです.自分がどうしたいのかがはっきりしない方は,とりあえず「目的」の観点から仕事のポジティブな面を探してみるといいかもしれません.
2.ジョブ・クラフティングが自分や自分の周囲にどう影響するか評価する
ステップ1で考えた解決方法に対して,それが自分や周りにどんな影響をもたらすのかを考えます.そのうえでそれが以下のどちらに当てはまるかをチェック.
- 全員にとってWin-WInの場合:ステップ1の策を講じることによって誰も損をしない場合は,次のステップへ.自分の視点を変えるだけなら基本的には周りにネガティブな影響は少ないでしょう.
- 誰かがLoserになってしまう場合:ステップ1の策によって誰かにマイナスの影響が発生するようなら,ステップ1に戻って新しい解決方法を考えます.いくら自分の希望がかなっても誰かに損失が出るようならやり直しです.
この過程を通じて,自分が試すジョブ・クラフティングの具体的な方法を選定するわけです.
先に損失を想定しておくことで,トラブルを最小限にすることにもつながるんで,さらに抱える問題を増やしてしまう,という最悪の事態を避けることにもなります.
3.ジョブ・クラフティングを実践する
「自分は病院の『大使』なんだ!」みたいに肩書をつけるでも,会議にタイマーを設置するように提案するでも,ステップ2で決めた方法を実践するステージです.
長期間ストレス下に置かれたりすると,それを回避するための行動をとろうとすらしなくなる傾向がありますんで,なるべく早めに,少なくとも対処しようと行動することが大事です.
4.ジョブ・クラフティングの効果を確認,改善,継続する
最後はフィードバックのステージです.
- 仕事が少しでも自分の価値観にあっているものになったか?
- 上司やクライアントにはどんな変化があったか?
- もっと自分や周りにいい影響をもたらせる方法はないか?
みたいなポイントを考えます.今回のジョブ・クラフティングの反省とともに次へのアイデアを考えるわけです.
まとめ
そんなわけで,最近話題の「ジョブ・クラフティング」のお話でした.自分の価値観と仕事とのマッチ率を高めていくことで,仕事に対するやりがいは確実に上がっていくでしょう.
会社が超絶ブラックとかの場合にはさっさと転職するべきだと思いますが,「なんか自分にはあってないかもなー」くらいの人は試してみるといいんじゃないでしょうか.天職を求めている人のほうが,そもそも天職なんて考えたことがない,という人よりも満足度が低い,というデータもあったりしますしね.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!