学習

ヘリコプターペアレントって子供の学習態度に影響するの?みたいな研究のお話

「ヘリコプターペアレントが増えている!」みたいな話をよく聞くようになりました.ご存じの通り,「ヘリコプターペアレント」っていうのは,

  • 子供が大人になってもなお,子供の生活全般に積極的に介入して,過度な干渉により子供の自立や自主性を阻害してしまう親


のことです.つまり,ヘリコプターのように上空から子供を常に監視する過保護な親のことですな.

親がヘリコプターペアレントだと,子供は大人になっても自尊心や自己効力感が低いままになるといわれていたりするんですよね.

で,新しいデータ(R)では,「親がヘリコプターペアレントかどうかで,大学生の学習状況に違いがあるのか?」ってポイントについてチェックしてくれておりました.



これは韓国のイファ女子大学校などの調査で,どんな研究かと言いますと,

  1. 看護学科の生徒149人を集める
  2. 対象者の親のヘリコプター度合いと,学習態度を調べる
  3. それらの相関関係を調べる

といったシンプルな感じ.ここでいう「学習態度」っていうのは,「新しい情報を整理,記憶する認知的なスキル,学んだことを他に応用するスキル,学習にかかわる環境を制御する能力」のことを意味します.つまり,試験でいい点数を取るだけでなく,実際にその知識を応用し,現場で使えるようにするために必要となる能力のことですな.

このほかに,

  • クリティカルシンキング:一つの事象を複数の側面から検討し,客観的な判断をするスキル
  • 認知能力:知識を習得し,情報を効率的に処理する能力
  • 学習のモチベーション


といった要素も調べて,これらの影響も調査されました.どれも学習においては非常に重要となる指標ですな.



それで結果としてどんなことがわかったかと言いますと,

  • 親がヘリコプターペアレントレベルと参加者のクリティカルシンキング気質,学習のモチベーションとの間に正の相関がみられた(それぞれr=0.25, 0.17).
  • 学習態度と相関がみられたのは,クリティカルシンキング(r=0.40),認知能力(0.29),学習のモチベーション(r=0.42)だった.


みたいになっております.ただ,当然ながらこれだけだとまだ,「本当にヘリコプターペアレントで子供の学習態度に影響があるか?」はわからないので,研究チームは続いて高度な統計的手法を用いて,各要素の関係を深堀してくれております(VIFなど).

これによってどんな因果関係がみられたかと言いますと,

  • ヘリコプターペアレントレベルによって学習態度に与える影響は有意ではなかった.
  • 一方,モチベーション,認知能力,クリティカルシンキングはそれぞれ学習態度にポジティブに影響していた


ということで,親のヘリコプターペアレントレベルと子供の学習態度との間に直接的な関係はなかったそう.



先行研究なんかを見てみると,ヘリコプターペアレントは大学生の子供の自尊心の低さとか,バーンアウト,試験の成績とかに悪影響を及ぼす可能性が指摘されていたんで,今回の結果はちょっと意外ですな.

研究チーム曰く,

この研究は,ヘリコプターペアレントが学習態度に有意な直接的な影響は及ぼしていないことを示したが,クリティカルシンキング気質やモチベーションとは有意に相関していた.したがって,ヘリコプターペアレントの学習態度への間接的な影響を調べる必要がある.


とのこと.今後の研究に期待,というわけっすね.



というわけで,どっちつかずな結論になってしまいましたが,親側としては,

  • 細かいところまで干渉せず,子供が頼ってきたら助けてあげる


くらいがちょうどいいんじゃないでしょうか.いざというときに頼れる場所がある方が,子供はのびのびと新しい挑戦とかもしやすいでしょうし.

一方,自分自身の学習態度を向上させたい人は,親の介入をどうこうするというよりも,とりあえず学習へのモチベーションの向上を図ってみるといいと思います.実際,当研究でも学習態度と最も強い相関がみられた要素がモチベーションの要素でして,研究チームも,

看護の学生の学習へのモチベーションを高めるような効率的な戦略を開発,調査することが必要だ.


とコメントしております.これは看護以外の他の分野の学習をしている人にも共通していえることでしょう.なので,学習態度の向上を目指す人は,「この学習が将来どう役に立つのか?」「誰の役に立つのか?」を意識する,みたいに,モチベーションを高める介入を試してみるといいんじゃないでしょうか.

もちろん,ソクラテス式問答法とかで,クリティカルシンキングを鍛えるのも十分効果的だと思います.

参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.

それではっ!

-学習
-, , , ,

© 2024 おくさんずラボ Powered by AFFINGER5