「認知機能をアップさせたり,衰えを防ぎたいなら有酸素運動だ!筋トレだ!食生活の改善だ!」みたいな話はよく聞くところ.
ただし,どうしても認知機能の変化はかなりややこしくて,何が本当に効くのかを調べるのは難しいんですよね.ここら辺のRCTとかを見てみても,サンプル数が少なかったり,短期的な影響しか調べられていなかったりするんですよ.
そこで,新しい研究(R)では,「運動や食事によって,長期的に認知機能にどう影響が出るの?」ってのを調べたRCTを行ってくれておりまして参考になりました.
実験では,まずベースラインにおいて57歳から78歳の男女1401人を集めて,以下の6つのグループにわけました.
- 筋トレをする:中から強程度の筋トレを週に2回以上
- 有酸素運動をする:中から強程度の有酸素運動を週に5回以上
- 食習慣を改善する:一日400g以上の野菜,フルーツ,ベリー,週に2サービング以上の魚,1000kcal当たり14gの食物繊維,飽和脂肪酸は総摂取エネルギーの10%以下に抑える
- 筋トレ+食習慣の改善
- 有酸素運動+食習慣の改善
- コントロール群:運動や食事の一般的な情報を与える
これを4年間継続してもらって,その後の認知機能の変化を調べたんだそう.
4年間っていうのは他のRCTに比べて圧倒的に長いし,さらに運動と食事を組み合わせたグループも設けているのはいい感じです.
その結果,どんなことがわかったかと言いますと,
- 有酸素運動と食生活の改善を組み合わせたグループだけ,コントロール群に比べて認知機能のスコアが高かった.
- 他のグループにおいては,コントロール群との間に有意な違いは見られなかった.
- この傾向は,性別や年齢,教育レベル,鬱症状,腹囲等を調整しても同様に確認された.
ということでして,有酸素運動と食生活の改善を組み合わせた場合にだけ認知機能の低下を抑えられていて,運動や食事単体,筋トレ+食事では効果はなかったらしい.
まあ,RCTとはいえどうしても緩めの研究なんで,先行研究よりは運動や食事の効果は多少小さくなるかなーとは思ったんですが,食事や運動単体だとコントロール群との間でどれも違わなかった,ってのは少し驚きました.
監視とかをするなどして厳密なチェックができなかったことが,結果に影響を与えている可能性が考えられるわけですが,研究チーム曰く,
私たちの結果において重要なのは,たとえ監視がなくても,有酸素運動と健康的な食習慣を組み合わせることで,中高年の人の4年間にわたる一般的な認知機能の改善につながるかもしれないということだ.
とのこと.ガチガチに食事や運動習慣をコントロールしなくても,認知機能を維持,改善できる可能性は十分ある,ってことでより現実的なアドバイスになってるんじゃないでしょうか.
また,有酸素運動と健康的な食習慣の組合せだけに意味があって,運動や食事単体とかの場合には必ずしも効果はないというわけではなくて,
- 有酸素運動単体で認知機能の改善を示したRCTが複数ある
- 筋トレで中高年の認知機能の低下の抑制がメタ分析でも確認されている
- 地中海式とか食事の内容を変えれば効果も変わるかも
みたいな点には注意が必要でしょう.
そんなわけで,認知の老化を防ぎたいと思ったら,まずはとりあえず有酸素運動の導入と,食習慣を見直してみるといいかもしれない,ってことで.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!