「マインドフルネスっていいんじゃない?」みたいな話は当ブログでもよく書いておりまして,私も毎日のように瞑想を続けていたりします.
「本当にどこまで効果あるの?」「逆にネガティブな思考が爆発しちゃうこともあるんじゃない?」みたいなことも言われておりますが,個人的には,「特に問題を感じないならやっといて損はないんじゃないかなー」くらいの気持ちで継続しております.
で,新しいデータ(R)もマインドフルネス関連で,「マインドフルネスのどんな要素が感情の安定に寄与してるの?」みたいなことを調べてくれておりました.マインドフルネスというと,「今に集中すること!」みたいに大雑把にとらえられることが多いんですが,実際は「目の前のことに意識を向ける」ほか,「目の前のことを評価せずただ受け入れる」みたいに,複数の要素から構成されているんですよね.この研究ではそこら辺をちょっと深堀してみたわけです.
これは2つの実験から構成されたヨハネス・グーテンベルク大学の研究で,まずはどんな実験だったかをざっくりまとめると,
- 合計300人の精神的に健康な若者を集める.
- 半数の参加者にはマインドフルネスのトレーニングに取り組んでもらう(実験1のみ).
- スマホの通知で送られてくるアンケートに回答する.アンケートの項目は,「マインドフルネスレベル」「どんなことをしていたか」「どんな気持ちか」など.
みたいになっております.ちなみに1つ目の実験で行われたマインドフルネスのトレーニングは,研究室で12分間の呼吸瞑想,自宅で11分間の呼吸瞑想または23分間のボディスキャン瞑想を6週間行う,というものだったそう.
この手の研究は,メンタルに疾患を抱えている人を対象にしているものが多かったりするので,特に問題のない人を対象に行われた点も参考になりましょう.
で,その結果どんなことがわかったかと言いますと,
- マインドフルネスを行ったグループでは,ネガティブな感情の報告が減っていた.
- また,トレーニングを行った人では,いやな出来事に対するネガティブな感情への反応が減少していたが,ネガティブな感情からの回復のスコアは変わらなかった.
- 普段より感情や思考に意識が向いている状態(マインドフルの一要素)だと,ネガティブな感情への反応のスコアは低下,ネガティブな感情からの回復のスコアは向上していた.
- マインドフルネスの一要素である「アクセプタンス」のレベルが高い人ほどネガティブな感情への反応性が低かった.
みたいになっております.「アクセプタンス」ってのは,嫌な出来事とか感情がわいてきても,それに対抗せずただ受け入れる姿勢のことで,これがうまい人ほど嫌なことがあってもそれに感情が揺さぶられなかったそう.それに比べて,自分の思考や感情に意識を集中させても,ネガティブな感情への反応はそこまで低下していなかったみたい.
研究チーム曰く,
自分の内側への意識の集中は,マインドフルネスのトレーニングの後のネガティブな感情への反応性の低下にだけ関係していた(実験1)が,この効果は,明示的にはマインドフルネスのトレーニングをしていない人には確認されなかった(実験2).
これは,マインドフルネスのトレーニングが,ネガティブな感情に対して,マインドフルな気質とは異なる影響を有しているかもしれないことを示唆している.
例えば,マインドフルネスを練習すればアクセプタンスが向上する.(中略)一方,トレーニングをしなければ,自分の内側への意識はアクセプタンスの姿勢とは関係がなく,ネガティブな感情への反応性にもメリットはないかもしれない.
とのこと.もともとマインドフルな思考・感情を身に着けている人とは違うメリットをマインドフルネスのトレーニングはもたらしてくれるかもしれない,というわけですな.それを踏まえて,「よりアクセプタンスに焦点をトレーニングをしてみると効果が上がるかもよ?」みたいなこともコメントしておられました.
そんなわけで,瞑想とかでマインドフルネスを鍛えるときには,自分の意識をコントロールするぞ!っていうよりも,意識が逸れてもそれを判断せずに受け入れるぞ!っていう気持ちを強めにもって取り組んでみるのもいいかもなーと思いました.
「感情をコントロールできるようになりたい!」「嫌なことに心が振り回されないようになりたい!」という人がいれば,そこら辺を意識してマインドフルのトレーニングをしてみると役に立つかもしれません.「そもそも瞑想ってどうやるの?」という方は,「科学的なメリットまとめと瞑想の具体的な実践方法」などをご参照くださいませー.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!