ある程度までなら収入が多いほうが幸福感が高まるのは複数のデータで確認されている事実。そんな中でカリフォルニア大学などの研究(R)では、「収入よりも貯金額のほうが幸福を正確に予測できるんじゃない?」みたいになっていて面白かったです。
幸せになりたきゃ収入よりも貯金の額のほうが重要なんじゃない?
この研究では、イギリスのナショナルバンクの利用者585人(18~75歳)を対象にして、口座の流動資産の額と金銭的なウェルビーイングや人生の満足度を比較しております。この手の研究では、資産や収入として自己申告のものが多いんですが、今回の研究では銀行の客観的なデータを使っている点はありがたいっすね。
そのほかにも、収入や出費額、投資や借金の額、雇用状況や配偶者の有無等もチェックしたんだそうな。
その結果どんなことが分かったかといいますと、
- 流動資産の額が多いほど金銭的なウェルビーイングが高く(r=0.39)、人生の満足度も高かった(r=0.21)
- 年齢や雇用状況、配偶者の有無等を調整してもなおこの傾向は維持された
- また、この関係は収入や支出、負債額と人生の満足度の関係のいずれよりも強かった
って感じだったそう。要するに、いくら収入があるかよりも、すぐに引き出せるお金をいくら持っているかのほうが金銭的に幸福感がたかく、人生の満足度も高くなる、と。個人的には、負債額よりも効果が大きいというのはちょっと意外でした。
「それってある程度稼いでる大人だけでしょ?」とも考えがちですが、対象となった参加者は18才~となっていて、若いうちから同じような効果が認められたというのも面白いポイントでしょう。
金銭的な安心感が人生の満足度をブーストする
さらに研究チームは媒介分析も行ってくれておりまして、
- 口座の額と人生の満足度に対する金銭的なウェルビーイングの間接効果は有意に確認された。つまり、口座の額が増えると金銭的なウェルビーイングが向上することによって人生の満足度も向上する
- そのほか、投資額や借金の額にも間接効果が認められた
だったらしい。金銭的なウェルビーイングってのは、「お金のことが心配で眠れないことがよくある」「500ポンドくらいの予期せぬ出費に対処できる自信はない」みたいな質問にどのくらい同意するかってので測られておりまして、口座にあるお金が多いとこれらのスコアが低く、金銭的な安心感を感じられることで、人生の満足度も高くなるんじゃないかってことですね。
さらに、具体的な数字を確認しておくと、
- 銀行口座の預金額が1ポンドから1000ポンドに増えると、人生の満足度は2ポイント(20点満点)上がり、1000ポンドから10000ポンドに増えると、人生の満足度は0.7ポイントほど向上する
って感じ。現在預金額が少ない人の口座の額が増えた時のほうが、お金に関する不安の減少レベルが大きいというのは想像しやすいでしょう。そしてその結果として、人生の満足度も高くなるというわけですね。
不確実性の世の中と貯金
研究チーム曰く、
今回の相関データでは因果関係を結論付けることはできないが、必要な時にお金にアクセスできるということは、収入や投資、負債額以上に、お金と人生の満足度の関係を説明するうえでユニークな役割を果たしていることが分かった。
多くの人は、収入や総資産を増やすことで幸福度が高まると考えているが、それだけではなく、当座預金や普通預金に経済的なバッファーがあるほうが幸福度が高まる。
このバッファが、収入や投資、借金の額にかかわらず、幸福度の向上に関係しているのだ。
いくら収入が多くても不必要なことにお金をばらまいてばかりで貯金の額が少なかったら、お金の問題を抱えやすいし、長期的にみて人生が幸せになりにくいというのは想像に難くないでしょう。
まあ日本人にどこまで当てはまるかは謎ですし、複数の口座を持っている人が多い点なんかを考えてもどこまで正確なのかなーってのはちょっと疑問ですかね。
また個人的には、そもそも貯蓄が多い人は誠実性の高い等、性格的な要素が人生の質の向上に大きな影響をもたらしているんじゃないの?ってのもちょっと気になりまして、預金額を増やせば人生がもっと幸福になる!と結論付けるのも尚早でしょう。
とはいえ、不確実性の高い現代において経済的な安心感を確保しておくってのは非常に大事なことだと思うんで、収入だけでなく貯蓄のこともしっかり考えておいていただくといいんじゃないでしょうか。
参考になれば幸いです。質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです。
それではっ!