「頭脳の衰えを遅らせるにはどうすればいいだろう?」みたいな話をよくしている当ブログ。高齢化が世界的に進むにつれて、認知症の対策なんかは喫緊の課題なんですよね。
ってことで、最近では食事とか運動とかいろんな対策が推奨されているんですけど、新しい研究(R)では、「仕事」の観点から認知症を予防する方法が提示されていてまことにいい感じでした。
早速結論を言ってしまうと、
- チャレンジングで、刺激的で、責任を伴う、骨の折れる、頭を使う仕事をしようぜ!
って感じ。常にこういう仕事をしているだけで、その他の認知症リスク要因と同じくらいの影響がもたらされるんだよーっていう話。
「頭を使う仕事」はどのくらい認知症リスクを下げるか?
研究の内容をざっくりいうとこんな感じです。
- 複数の研究から10万人以上のデータを集める
- 仕事における「認知的刺激」のレベルと後の認知症発症のリスクの関係を調べる
- さらに、認知機能に関係があるとされる血漿タンパクもチェック
って感じ。追跡期間は13.7年から30.1年となっておりまして、この手の研究としては最大規模と言えましょう。これまでの研究はどうしてもサンプルサイズが小さかったり、期間が短かかったりってのがが問題だったんですよね。また、データに含まれた人たちの職種も多岐にわたっていて、多くの人に参考になるんじゃないかと。
「認知的刺激」ってのは要するに、「どのくらい頭を使う仕事か?」ってことで次の2つの要素から測定されました。
- 仕事の難易度
- 仕事をどのくらいコントロールできるか
つまり、日常的な仕事が難しく、自分でコントロールできる要素が大きいほど、「認知的刺激」が高いと評価されたというわけ。
それで、この「認知的刺激」のレベルによって後の人生で認知症になるリスクがどのくらい変わるのか?ってのを調べたんだ、と。
「頭を使う仕事」は認知症リスクを23%下げる!
結果、調査期間中に認知症と診断された人は1,143人おりまして、どんなことがわかったかと言いますと、
- 年齢、性別を調整した結果、認知的刺激が高い仕事をしている人は、低い仕事をしている人に比べて、のちに認知症になるリスクが23%低かった(I2=0%)
- さらに、認知症リスクと関連がありそうな他の要素を調整しても、なおそのリスクは18%低かった
- この関係は、特にアルツハイマー型認知症において顕著に確認された
だったそう。2つ目のポイントで調整された要素ってのは、喫煙、アルコール、教育、身体的活動、肥満、高血圧、糖尿病、孤独、うつ、外傷性脳損傷といったもので、認知症リスクにかかわるといわれるほとんどのポイントが含まれてたんですよ。
つまり、「頭を使う仕事をしていたかどうか」という点それ自体が独立して認知症リスクに関係していると考えられるというわけ。
ちょっと専門的な話になりますが、この研究では、ほかにも分かったことがありまして、
- 職場での認知的刺激が高い人ほど、SLIT2(β-0.34)、CHSTC(β-0.33)、AMD(β-0.32)のレベルが低かった
- これらのレベルが高かった人は、認知症のリスクも高かった
だったらしい。この3つのたんぱくは、中枢神経系の軸索形成やシナプス形成を阻害するとされていて、以前から認知症リスクとの関係が示唆されていたんですよ。
つまり、頭を使う仕事をしている人の脳内では、このようなタンパクの形成が抑制されることで、認知症の発症が抑えられているのかもしれない、というわけ。
まとめ+α
ちなみに、今回調べられた「認知的刺激」の高さによる認知症の相対リスクが約1.3だったのに対して、他の要素はどのくらい認知症に影響するのかというと(R)、
- アルコール摂取量の多さ:1.2
- 身体的活動レベル:1.4
- 教育レベル:1.6
- 糖尿病:1.5
- 喫煙習慣:1.6
- 高血圧:1.6
- 肥満:1.6
って感じになっていて、認知症を予防したいなら考慮すべきリストとして「頭を使う仕事かどうか」も加えておいていいんじゃないかと思いますね。
研究チーム曰く、
職場における認知的刺激と認知症リスクとの関係は、性別、年齢問わず確認された。
この強固な関係性は、ポリシーを制作する際に重要であり、将来の脳の健康のために、認知的に刺激のある仕事が皆にとって大切だということを示唆している。
とのこと。先行研究(R)によれば、いくら余暇の時間に頭を使う活動をしても認知症リスクの低減には影響を及ぼさないようで、「仕事」においてちゃんと頭を使えてるかのほうがよっぽど大事みたい。
そんなわけで、就職、転職、退職を考えている方なんかは参考にしてみてくださいませ。
質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです。
それではっ!
【参考動画】