「自然との触れ合いが心身へ様々なメリットをもたらす!」っていうのは多くのデータで示されているわけです.
中でも,ストレス解消とかメンタル面のメリットは「自然の写真や動画」を見るだけでもあるんじゃない?ってことが言われているわけですが,新しい研究(R)では,「自然の写真を見ているときに脳はどう動いているのか?」みたいなポイントを調べてくれていて面白かったです.
これは山口大学などの実験で,30人の健康な若者を対象にしたもの.全員にはまず,fNIRSっていう酸素化ヘモグロビンの変化量から脳の活動を測定する装置と,アップルウォッチ(心拍数の計測用)を装着してもらって,以下の2種類の写真をランダムな順番で3分間ずつ見てもらったそう.
- 自然の中の写真
- 自然が少なく建物に囲まれた写真
それで,それぞれの写真を見た直後に,「写真を見て気分がどう変わったか?」っていうのを報告してもらったらしい.
脳の活動の測定に当たっては,「眼窩前頭皮質」「背外側前頭前野」っていう感情処理や感情コントロールに関与する前頭前野の部分に注目したんだそう.
でもって,その結果がどうだったかと言いますと,
- 自然の写真を見た後では,都市の写真を見た後に比べて,「快適さ」「リラックス」をより高く感じたと回答した.
- 自然の写真を見ている間は,都市の写真を見ている間よりも,右側眼窩前頭皮質の酸化ヘモグロビンの濃度が低かった.
- 左側眼窩前頭皮質や,背外側前頭前野においては有意差はなかった.
- 心拍数にも有意差はなかった.
って感じだったそうな.要するに,自然の写真を見て気分が改善するのは,右側眼窩前頭皮質の活動が穏やかになるからなのかも?ってわけですな.
右側と左側でなんで差が出たの?みたいな点ははっきりしませんが,とりあえず眼窩前頭皮質は,抑うつや不安障害を抱える患者において,休息中であっても活動が高く維持されがち,といったことが知られる分野なんですよね.研究チームは,
これらの患者(抑うつや不安)における眼窩前頭皮質の異常な活動の上昇は,偏桃体の活動過多が原因だと考えられている.
したがって,自然の画像を見たり,その他の方法で自然に触れあうことは,眼窩前頭皮質(もしかしたら偏桃体も)の活動を調整し,これらの患者に対するセラピーとしての効果があるかもしれない.
とコメントしております.特に当該分野が異常に活発化してしまってメンタルに支障をきたしている人は,自然と触れ合うことでちょうどいい具合に修正できるかも,というわけですな.
もちろん,病名のある状態まで行かない人であっても,自然との触れ合いがメンタルの改善・向上に寄与することは多くの研究で示されておりまして,積極的に日常に取り入れていきたいものです.研究チーム曰く,
私たちは,意図的に自然にさらす機会を増やしたり,付随的に自然に触れる機会を増やすために自然が豊富や環境を周囲に構築することができるだろう.
これは,屋内植物や自然のポスターを置いたり,コンピュータやタブレット,スマートフォンの壁紙を自然の画像に変えるなど,簡単にできることである.それは公園で散歩をするなど,自然環境で屋外活動を行うことにも言える.
このような日々の活動が脳を落ち着かせ,気分を改善することに役立つのだ.
とのこと.自然の写真を見ることによる脳のリラックス効果は,当人が実験の真の目的を知っていても知らなくても同様に確認されたそうで,意図的であろうと偶発的であろうと,自然に触れることで気分は同様に改善すると考えられるわけっすね.
そんなわけで,観葉植物を置いてみたり,スマホやPCの壁紙を自然の写真に設定してみたりすると,手軽なストレス解消法になっていいかも.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!