たばこが体に害をもたらすことは言うまでもないですが、特に最近では、喫煙エリアが急速に減っていて、喫煙者にとってはつらい状況となっているかと思います。
タバコはその依存性からなかなかやめようと思ってすぐにやめられるものでもないでしょう。
もちろん一番はお医者様と相談しながら徐々にやめていくのがいいと思いますが、今すぐできる対処法はないのでしょうか。
最近では、従来の紙巻きたばこだけでなく加熱式たばことか電子タバコとかいろいろありますが、もしそれらのたばこのほうが体への害が小さいのであれば、とりあえず紙巻きたばこからそちらにシフトすることで、心理的負担の小ささから移行しやすく、害も多少軽減できるのではないかと考えられます。
それが成功すれば小さな自信にもなって、さらにたばこを完全に断つということも少しは楽になるかもしれません。
ってことで、今回は、紙巻きたばこと電子タバコの心血管系への影響の違いを調べたクロスオーバー研究についてメモ。(R)
研究では、36人の健康な喫煙者に参加してもらって、1日の間の
- 心拍数
- 血圧
- プラズマニコチンレベル
- 尿中のカテコールアミン(神経伝達物質)
- 8-イソプロスタン、11-デヒドロ-トロンボキサン B2(血管収縮とかにかかわるやつ)
- IL-6, IL-8(免疫を制御するやつ)
等を調べて、紙巻きたばこを吸った人、電子タバコを吸った人、なにも吸わなかった人、で比較しました。
これは、24時間、たばこによる心血管系への影響を調べた初めての研究だそうで、たばこによる短期的な影響について理解するものとしてよろしいのではないでしょうか。
早速結果を見ていくと、
- 紙巻きたばこ、電子タバコ、タバコなしの順で、心拍数(bpm) は、
- 24時間平均でそれぞれ、72.5, 68.7, 66.8.
- 日中(8時から23時)ではそれぞれ、76.4, 72.3, 69.2.
- 夜(0時から8時)ではそれぞれ、65.3, 62.2, 62.6.
- 同様に、血圧(mm Hg) は、
- 24時間平均でそれぞれ、76.8/119.9, 76.7/120.2, 73.2/116.8.
- 日中ではそれぞれ、80.0/123.2, 80.0/124.2, 75.7/119.5.
- 夜ではそれぞれ、71.0/113.8, 70.6/113.1, 68.6/111.7.
ということで、24時間と、日中の心拍数は、電子タバコより紙巻きたばこのほうが高く、タバコなしより電子タバコのほうが高い、また、夜間では、紙巻きたばこで高く、電子タバコはタバコなしと同程度であった、ということがわかります。
血圧に関しては、電子タバコも紙巻きたばこも同じような値を示し、どちらもタバコなしより高かった、ということがわかります。
つぎにプラズマニコチンレベル等その他のバイオマーカーについてざっとみていきます。
- 電子タバコ群のニコチンレベルのほうが、概して紙巻きたばこのニコチンレベルよりも低かった。(それぞれ、182ng/mL, 246ng/mL)
- もっとも、参加者のうち25%は、電子タバコの時のほうが高いニコチンレベルを示していた。
- 尿中のエピネフリン、ノンエピネフリン、ドーパミンの分泌量は、各郡で大きく差はなかった。
- 尿中の8-イソプロスタン,11-デヒドロ-トロンボキサンB2も大きく差はなかったが、タバコなし群に比べると高いレベルを示す傾向がみられた。
- IL-6, IL-8は、ともにタバコなしに比べるとかなり高いレベルを示した。
雑にまとめてしまえば、紙巻きも電子タバコも、大体同じような24時間の血行状態、炎症レベルを示している。でも、電子タバコの方がましかも?って感じでしょうか。
研究チームは、
電子タバコは、無害ではないけれど、喫煙者が紙巻きたばこから電子タバコへ完全に移行できれば、害を減少する大きな機会になるかもしれない。
とコメントしていて、現段階で紙巻きたばこを吸っている人は、とりあえず電子タバコに移行してみるというのは一つの手かもしれません。
本研究は短期間のものでしたが、先行研究では、長期間の電子タバコユーザーへの悪影響もよく研究されています。
禁煙は、容易ではないですが、とりあえず喫煙による害を調べてみるとか、代用できそうなものを探してみるとか、一つずつ段階を踏んでいくことが大事なのではないかなと思います。
参考になれば幸いです。それではまた。
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