「ギバーのほうが成功しやすい!」みたいな話にも関連してきますが,「共感力が大事!」みたいな主張をたまに見かけます.収入に関してはざっくりいうと,
- 共感力が高いと人の気持ちがわかる
- 同僚や上司,部下とうまくやれる
- 成果を上げ,昇進する
- 収入アップ!
みたいな流れ.うまく人とつながることによって地位や信頼を獲得して収入が上がる,というわけです.
一方,「共感力が高いと逆に収入は下がる!」という主張もあります.つまり,
- 共感力が高いと人と競争を避けたがる
- また,身の回りの環境にすぐ適応できる
- 本来のパフォーマンスを発揮できず,成長もない
- 収入は停滞…
みたいな感じ.人とうまくやる能力があだになってしまうわけですな.
そんなところで,「共感力は収入とどんな関係があるの?」って点を調べてくれた論文(R)が出ておりました.
これは,サンタクララ大学などの調査で,4つの大学の卒業生を対象に,大学を卒業してから1年後から6年後にかけて,以下のようなポイントをチェックしたんだそう.
- 共感力
- 給料
- 職種
- 役職
- 勤続年数
ここでいう「共感力」の定義は,「他人の思考や感情を認識,理解すること」とされていて,IRIという指標を用いて測定されたそう.
で,その結果わかったのが,
- 共感力が高い人ほど給料が低い傾向があった.
- 共感力の中でも最も強い関係性がみられたのは,「共感的配慮」(後述)の項目だった.
- 男性よりも女性のほうが共感力が高く,給料も低い傾向があった.
- 共感力の高い人は,給料が低くなりがちな専攻,仕事(非営利の団体とか)を選ぶ傾向があった.
- もっともそれらの要素を勘案しても,共感力と給料の間の負の相関はなお確認された.
だったそう.なんと共感力のポイントが1ポイント上がるごとに給料は17%も低下するんだそう.
「共感的配慮」っていうのは,共感力の一つのサブカテゴリーで,不運や不幸に見舞われた人に対して共感,同情する能力のことです.
また,給料が低くなりがちな専攻っていうのは,人文学や社会科学で,一方エンジニアリングやビジネス専攻は給料が高くなる傾向がみられたそう.
研究チーム曰く,
好みが,共感力の高い人を社会奉仕や他人の世話などを目した給料の低い仕事を選ばせているように思えるが,共感力の高さが生産性にネガティブな影響を及ぼしている可能性も除外できない.
とのこと.つまり,確かに共感力の高さによって選ぶ道は異なるけど,選んだ道の先におけるパフォーマンスにも影響しているのかも,ってわけですな.どちらもありそうな印象です.
というわけで,「協調性が高いと収入が低い!」という報告とも一致する結果となりました.共感力が高いと「ギブアンドテイク」でいう「ボトムのギバー」になりやすいのかもしれませんな.
この実験から得られる教訓としては,
- 共感力の高さは収入との関係ではマイナスかも
- 共感力の高い人が収入をあげたいなら,職種などの選択を見直すべきかも
- また,仕事で人に合わせすぎていないかも検討すべきかも
ってとこでしょうか.共感力高めの皆さんは,少し意識してみるといいかもしれません.
他者に手を差し伸べるのは素晴らしいと思いますが,それを実現するにはお金にもつながる別のいい方法があるでしょうしね.視覚障害を持つ方に寄付する代わりに,暗闇の中での体験型ゲームにおいて働く機会を提供する,なんていうのはいい例でしょう.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!