晩婚化,少子化が進む昨今,やはり,子供は作るべきなのでしょうか?
幸福に関しては,複数の研究で,子供を作ってもむしろ幸福度は下がる!という結論になっているものが多いのが実のところ.(例えば,2003年のメタ分析Rなんかは有名どこ)
今回は,幸福がいまいちなら健康との関係ではどうなの?,つまり,「子供を持つことと健康との関係」というテーマで調べた面白いデータ(R)がありましたのでメモ.
この調査は,20の国の50歳以上の10,9648人を対象にした横断研究で,子供の有無と5つの健康の指標との相関が調べられました.
調査が行われた国は以下の20個.
- オーストラリア
- ベルギー
- 中国
- チェコ
- デンマーク
- エストニア
- フランス
- ドイツ
- ハンガリー
- イタリア
- ルクセンブルク
- メキシコ
- オランダ
- ポーランド
- ポルトガル
- スロベニア
- スペイン
- スウェーデン
- スイス
- アメリカ
残念ながら日本は含まれていなくて,主にヨーロッパの國が中心となっていますが十分参考にはなるでしょう.
また,調べられた健康の指標は,以下の5つ.
- 主観的な健康観
- ADL(日常生活の動作)
- IADL(ADLより頭を使った判断が要求される動作)
- 慢性的な健康状態(高血圧とか肥満とか)
- 抑うつ
これらが,子供を持つ親とそうでない大人との間で違っているのかが調べられたわけですね.
早速その結果をざっとまとめると,以下のようになりました.
- 全体では,7.7%の人が子供を持っていなかった.(最小で中国の2.0%,最大でスイスの16.3%)
- IADLに関して,「子供を持たないこと」と統計的に優位な関係がみられたのは11か国で,そのうち10か国は,十分なIADLと,メキシコだけはIADLの不足と相関がみられた.
- 主観的な健康観に関して,「子供を持たないこと」と統計的な優位な関係がみられたのは5か国のみで,そのうち3か国はポジティブな相関,2か国はネガティブな相関がみられた.
- ADLに関しては,「子供を持たないこと」と統計的な優位な関係がみられたのは8か国で,そのうち5か国では十分なADL,3か国ではADLの不足が確認された.
- 抑うつに関しては,「子供を持たないこと」と統計的な優位な関係がみられたのは6か国で,そのうち4か国では,抑うつの傾向が強まり,2か国では抑うつの傾向が小さかった.
- 慢性的な体調に関しては,「子供を持たないこと」と統計的な優位な関係がみられたのは5か国で,それぞれネガティブな関係がみられた.
てことで,状況や指標によってばらばらで,子供を持っているか否かと健康との間には一貫した関係がみられませんでした.
もちろんより若い世代の人や日本でも同様に当てはまるかはわかりませんが,上記のような違いの原因の一部として以下のような点が指摘されていました.
- 子育てに関する家族や周りの十分な支援があるかどうか
- シンプルに経済的な問題
どれも納得がいく説だと思います.後続の試験が楽しみです.
この結果に対して研究チームは,
子供がいないことは,健康の複数の指標において普遍的に有害ではないというエビデンスが見つかった.このパターンは,これまで調べられてきたより広い状況の国であてはまるだろう.
とコメントしていて,健康という観点からすると,周りの支援とか,状況とかで,ポジティブにもネガティブにもなりうるということですね.
身体的な面でも精神的な面でも子育ては大変でしょうが,見方を変えて,子供と一緒に遊んだり楽しんだりすることで,健康にもプラスの効果をもたらすことができるのではないでしょうか.
参考になれば幸いです.それではまた.
<おすすめ本>