今月おもしろかった7冊の本【2022年2月編】

「2021年に面白かった50冊」をまとめて以来、1月編はさぼってしまいましたが、今年2月に読んで特に面白かった7冊を並べておきます!

事実はなぜ人の意見を変えられないのか-説得力と影響力の科学

自分と異なる意見を持つ人を説得しようとするとき、私たちは多くの場合、自分が正しくて相手が間違っていることを示す「事実」を提示する。だけどいくら客観的な事実を提示したところで意見を換えられないどころか相手の気持ちを増幅してしまうことすらありうる。そんな時人間の脳の中はどうなっているのか?そしてその知見を仕事や日常生活ではどう実践すればいいのか?というところまでをわかりやすく解説してくれてる一冊です。

タイムズやフォーブズ誌の年間ベストブックにノミネートされてたりするだけあって研究成果と実用的な応用のバランスがちょうどいい感じ。まあビジネス書によくある「こういう話し方をすれば絶対相手を説得できる!」っていうテクニックベースの本じゃないですけど、脳に備わった本能ベースで説得のヒントが紹介されているので、むしろ応用の幅は広いんじゃないかと。

また、「別に相手を説得したい!」っていう場面じゃなくても自分の意思決定や選択のプロセスで役に立つ知見も多いんで、「選択の科学」なんかとセットで読んでみるのもおすすめですね。

あなたの体は9割が細菌: 微生物の生態系が崩れはじめた

イギリスのサイエンスライターさんが、「『普通』として受け入れられ始めている21世紀病の根本的な原因は『細菌』にあるんだ!」と主張し、微生物の重要性を再認識させてくれる本。「あなたはあなたが食べたものでできている」とは言いますけど、それよか「あなたはあなたの中の微生物が食べたものでできている」といった方が適切なんじゃないか、と。

現代になって急速に蔓延し、もはや「普通」になってきた肥満、アレルギー、IBS、ニキビ、自閉症、強迫性障害、不安症、うつのほか、性格や好みの異性のタイプ、帝王切開で生まれた子供の感染症リスクにまで共通して関連しているのが、人間と共存する微生物なんだっていう証拠が大量に提示されてます。

読了後には「生まれか育ちか」と同レベルのキープレイヤーとして共生微生物の存在をとらえたくなるくらいにはなりまして、何を見ても「もしやこれも微生物のせいなのでは!?」って考えたくなる(かも?な)点には注意ですね(笑)

進化しすぎた脳 中高生と語る「大脳生理学」の最前線 

東大の池谷裕二の高校生対談シリーズ第1弾。脳の構造から意識、アルツハイマーデザイナーベイビーの話題まで、人間の脳にまつわる様々なトピックを、当時の最先端の知見を取り入れながらわかりやすくかつ大胆に語った本。

教科書的な知識としてはあまり新しい情報を得られないかもしれないですけど、知的で好奇心旺盛な高校生と最先端の研究を進める研究者の対談はシンプルに読んでいて楽しいです。また、確かに進化的にも脳って特殊だよなーとか、20年近く前の神経科学ではこんなことをやっていたのかーとか、未だにこの問題は解決されてないよなーとか考えながら読んでいたら「やっぱ脳って面白い…!」って強く思いましたねー。今月は池谷先生の他の著書も読んでみたいと思っております。

医者が教えるサウナの教科書 ビジネスエリートはなぜ脳と体をサウナでととのえるのか?

自身もサウナーの一人である著者さんが、サウナが「ととのい」をもたらし、身体の様々な面でポジティブなメリットをもたらすってことを科学的な見地からわかりやすく説明してくれている一冊。具体的には、脳機能や睡眠、腰痛、肩こり改善、美肌、風邪予防の効果などが紹介されてます。

さらにこれらの効果を最大限に引き出すための実際のサウナの楽しみ方もみっちり説明されてます。私も読了後に久しぶりにサウナに行ってみましたが確かに今までよりすっきり感は強かった気はしました(プラセボの可能性も大だけど)。まあどうせサウナに入るならその効果とか正しい入り方を知っておくことに損はないと思うんで、特にサウナによく行く人とかこれからサウナーデビューしてみようと思っている人にオススメです。

巻末には筆者おすすめの全国のサウナが紹介されてまして、私も引き続き、白山湯さんに通って本書の知見を実践、テストしていこうと思っております。

死ぬ瞬間の5つの後悔

終末期の患者さんのヘルパーとして多くの命を看取ってきた著者さんの経験をもとに、「死ぬ前に皆が語る5つの後悔」をまとめた一冊。

著者さんによれば、私たちが日々考えがちな「もっとお金が欲しかった」といった言葉を最期に残す人は皆無で、「自分に正直な人生を生きればよかった」「働きすぎなければよかった」「思い切って自分の気持ちを伝えればよかった」「友人と連絡を取り続ければよかった」「幸せをあきらめなければよかった」という5つの共通する後悔を残しているのだそう。

まあ科学的な内容ってわけじゃないですけど、死の認識がモチベーションや成功確率を高めたりってことは確認されてますし、他人の経験から死をまじまじと想像してみる体験は有用なはず。しかし死を体験した本人から直接声を聴くのは不可能なわけで、その点この本は最期まで一人一人の患者さんに寄り添って本心を聞いてきたヘルパーさんがまとめてるってことで貴重な一冊かと思います。

後悔なく死ねるように、元気なうちに読んでおくのがお勧めです。

INNOVATION STACK―だれにも真似できないビジネスを創る

「イノベーション」というと「天才のひらめき」のように感じがちだけど、本当は「ある問題を解決すると、必然的に新しい問題が発生し、そのために新しい解決策が必要になって…」というイノベーションの連鎖─イノベーションスタック─の過程で生じるものなのだっていう一冊。イノベーションを起こしたいと主体的に思うのではなく、「イノベーションを起こさなければならない」っていう状況を繰り返し乗り越えていく道中にイノベーションというものは存在するのだ、と。

本書は、そんなイノベーションスタックによって成功したいくつかの事例を紹介していて、特にITスタートアップ企業(Square)がAmazonに類似サービスを立ち上げられても特に対処せずAmazonを撤退に追い込んだという事例なんかは印象的でした。

別に起業の文脈に限らず、例えば、早起きすれば出勤前にこの本を勉強できる!だけど睡眠時間を確保しないといけないから夜の分の勉強時間が無くなる。じゃあどうしましょう?みたいに日常の細かいところでも共感できる部分は多いはず。大小限らず何かしらの問題を解決したいというときには、多分思いついた解決策によって新たな問題も出てくるけどそれもセットでソリューションなんだよなーってのは日ごろから意識しておくのがよさげです。

知の逆転

ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソンという各業界の「巨匠」がそれぞれどんな考えで生きてきたのか、人類の未来をどう見据えているのかなどをインタビューしてまとめられた本。

6人が対立するような主張をしている点も多々あって、それもまた「知」の面白さだよなーとか感じました。6人で新書300頁くらいなので各人について深く知りたい方は別の本がいいかと思いますが、偉大な成果を残したこの大物6人の声をまとめて聞いてみたい!って方なんかにはおすすめです。本書をよんだうえでより深く考えを知りたいと思った人の著書をがっつり読んでみるというのもいいかもです。

その他もろもろ

  • WIRED(ワイアード)VOL.43:2022年に予見される10ジャンルのパラダイムシフト特集。宇宙、医療からインフラ、政府の在り方まで興味のあるジャンルだけでも見てみると2022年の楽しみが増えるんじゃないでしょうか。
  • AIの遺電子 Blue Age 3:最近私がハマってるマンガランキングナンバー1のシリーズ最新刊。AIを活用した恋愛とかは既に部分的に実用は始まっているし、作中に出てきた恋愛状況もそう遠くない未来なのかもなーとか思いました。

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