「音楽で脳が元気に!」みたいな話はよく聞くところで,認知症などの文脈でも「音楽で認知機能が回復するかもよー」なんて言われているわけです.
認知の回復や向上だけでなく,共感回路や報酬系の活性化,コルチゾールの低下といった効果も音楽には確認されていたりします.
そんなところでピッツバーグ大学の研究(R)では新たに,「認知機能が衰えてきた人が音楽に触れ合うとどんな効果があるの?」っていうのをまとめたメタ分析と系統的レビューをしてくれておりまして参考になりました.
もうちょい正確に言うと,この研究は認知症と経度認知障害の人を対象にして音楽による認知やメンタルへの効果を調べた21のRCTをまとめたもの.
対象者の平均年齢は68.9~87.9歳で,介入は一回30分から2時間を週に1~5回,これが4~40週間行われたそう.
それで分かったことをざっくりまとめると以下のようになります.
- 音楽によって認知機能が小程度だが有意に改善しており,研究間の異質性も低かった.特に,認知障害のレベルが低い人に顕著に効果がみられた.
- QOLや気分,うつ,不安,ソーシャルエンゲージメントなどの改善,向上の効果があるかも.厳密にいえば,効果量がばらばらで,ネガティブな影響が出る場合もあったらしく,さらに,音楽より運動のほうが高い効果を示したものもあったそう.
ということでして,そこまで大きな効果は期待できないものの,特に記憶力や思考力が衰えてきたかも?みたいな感覚がある人が音楽をやってみるのはありでしょう.
それじゃあ,音楽をどんなふうに行えばいいのかと言いますと,
- 歌でも,演奏でも,音楽に合わせて体を動かすでも何でもOK!
といった感じ.というのも,どんなタイプの音楽的な介入を行った場合でも,同じくらいの認知機能の改善がみられたみたい.一部では歌うよりも音楽を聴いた方が効果が大きかった,という結果も報告されておりまして,結局自分に合った方法を探すのがいいのかもってことっすね.
研究チーム曰く,
アクティブな音楽活動の介入を進め,このようなプログラムを広く提供することで,数百万の人の認知や感情,社会的なウェルビーイングにとって大きな力になるかもしれない.
とのこと.認知症の数は2050年には世界で1.5億人を超えるという見立てもあるし,音楽をうまく使う方法を確立すれば,たくさんの人を認知的な衰退による苦悩から救えるかもしれない,と.
この研究からは,例えば「音楽で認知症を予防できるのか?」みたいなことはわかりませんが,音楽を楽しむことでストレスレベルの低下,オキシトシンの分泌,みたいないい感じの効果は多く確認されています.なので,まだまだ元気な人でも,「ボケの予防になるといいなー」「ちょっとボケてもすぐ回復できるように慣れ親しんでおこうー」くらいの気持ちで音楽をあらかじめ練習しておくのもいいんじゃないでしょうか.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!