ダークトライアドと言えば,「人間の持つ3つの邪悪な気質」のこと.3つの特性とは,簡単に言うと,
- サイコパス:冷酷,反社会的で,外向性,開放性が高く,協調性,誠実性,神経症傾向が低い.
- ナルシスト:自分が大好きで,外向性,開放性が高く,協調性は低い.
- マキャベリスト:自分のために他人を操作する.協調性,誠実性が低い.
という感じ.どんな集団にも一定数存在していて,なるべく近寄りたくはないんですが,ダークな特性が結構社会では成功を促進するといわれていたりするんですよね.
ということでインディアナ大学の新しいメタ分析(R)では,
- ダークトライアドって起業で成功する?
ってポイントを調べてくれておりました.ダークトライアドが起業家として成功しやすいっていう報告は最近結構あったんですが,それをまとめてくれていて有益でした.
たしかにリスクとか不確実性を比較的恐れないダークトライアドは,起業においても成功しそうというのはなんとなくイメージできるかと思います.
今回の分析がどんなものだったかと言いますと,
- 39のサンプルから,11,819人分のデータを分析
- 参加者は現在または過去のビジネススクール生徒と起業家で,平均年齢は28.57歳
- 「ダークな性格」のスコアと,起業志向の強さ,起業後のパフォーマンスとの関係性を調べた
みたいになってます.起業志向,起業後のパフォーマンスっていうのは,それぞれ,
- 起業志向:「将来,いつか起業するぞ!」ってどのくらい思っているか
- 起業後のパフォーマンス:会社の生存率,成長率,利益率がどのくらいか
といった感じ.
その結果どんなことがわかったかと言いますと,
- マキャベリズムは,起業志向を高め(r=0.16),起業後のパフォーマンスを下げる(r=-0.22)傾向がみられた.
- ナルシズムは,起業志向を高め(r=0.24),起業後のパフォーマンスを高める(r=0.09)傾向がみられた.
- サイコパシーは,起業志向を高め(r=0.17),起業後のパフォーマンスを下げる(r=-0.10)傾向がみられた.
だったらしい.要するに,「ダークトライアドはどれも起業志向を高める一方,パフォーマンスが高いのはナルシストだけ」だったんだそう.
研究チーム曰く,
私たちは,他人をコントロールする力(支配力)が,他人の支配から解放される力(自由)と同じくらい起業行為の成功を予測する可能性を提案する.
とのこと.確かに他人の支配にとらわれずに自由にやることも大事だけど,どうしても他人の協力は不可欠になる場面もありますから,ある程度人を動かす力も必要なのかもしれませんな.もっとも,人を動かす自信があっても本当にその能力がないと,起業の実現には至ったとしても成功にはつながらないのかもしれませんが.
ナルシストだけが高いパフォーマンスを実現できていた理由については,
- 他の2つと違って,ナルシズムのカリスマ性や魅力にひかれて人がついてくるから?
- ナルシストは量より質を重視するから?
- 周りからのサポートが得られやすいから?
みたいな点が考えられていました.どれもありそうだなーって感じですな.まあナルシストって自分を好んでくれる人に対してはちゃんと尊重できたりしますからねー.自信があって頼れそうにも見えるし.
というわけで,「ビジネスを成功させたいなら,ダークトライアドの特性を拝借せよ!」みたいなアドバイスがあったりしますが,それを実践するんだとしたらナルシズムがいいかもしれませんね.
あとは人についていくときは,サイコパスとマキャベリストには注意すべし,ということで.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!