「恋愛感情をコントロールできない!」ってのは誰もが一度は経験したことがあるはず.
「相手のことが好きすぎてたまらない!」っていう場合だけじゃなくて,倦怠期で「最近相手にときめかない…」なんて話はよく聞くところです.
そんな恋愛感情の制御に苦しんだ結果,勉強や仕事等に影響が出るなんてのは「あるある」でしょう.
で,ある有名な論文(R)では,「恋愛感情はこうやってコントロールせよ!」みたいなことが提案されておりまして,これが結構参考になります.
これはミズーリ大学などの実験で,36人の男女が対象.半数は現在恋愛のパートナーがいる人,残りの半数は最近失恋した人だったそう.まずは簡単なテストで以下のようなポイントをチェック.
- 愛着スタイル
- 恋愛に対する考え方
- 恋愛感情の制御のためにとっている対策
その結果,以下のような結果が得られたそう.
- ほとんどの人が恋愛感情の制御は不可能だと考えていた.
- その対策としては,テレビを見る,音楽を聴く,運動するといった,「気をそらす」タイプの方法が最も多く用いられていた.
という感じ.多くの人は恋愛感情なんてコントロールできるものじゃないと考えて,その弊害を最小限に抑えるために,他の物事に集中して気を紛らわせようとしているというわけですな.
そこで,研究チームは,続いて被験者たちに以下のようなゲームを行ってもらいました.
- 30枚の写真が次々と表示され,その中に(元)パートナーの顔や全身の写真が含まれている.
- 最初の2つのブロックでは単純に写真を見てもらい,3つ目,4つ目のブロックでは,リアプレイザルを用いてそれぞれアップレギュレーション,ダウンレギュレーションを行ってもらう.
- その間の脳波を測定する.また,ゲームの後にアンケートに回答してもらう.
「リアプレイザル」っていうのは,簡単に言えば「原因や問題に対するとらえ方を変えてしまう」という方法で,詳しくは,『【リアプレイザル入門】見方を少し変えればストレスも力に変えられる。』を参照ください.
この実験におけるリアプレイザルの内容は具体的にはこんな感じ.
- アップレギュレーション:「彼はとても楽しい人だ」「私たちはとてもうまくいっている」「将来結婚するかもしれない」みたいに,2人の関係性のポジティブな側面に意識を向ける.
- ダウンレギュレーション:「彼女は怠惰だ」「私たちは喧嘩ばかりしている」「一生一緒にいるということはないだろう」みたいに,ネガティブな要素を意識する.
なんともシンプルな介入ながら結構な効果が確認されまして,結果をざっくりまとめると以下のようになりました.
- リアプレイザルによるアップレギュレーションによって,主観的な愛情の感覚が増加した.
- リアプレイザルによるダウンレギュレーションによって,主観的な愛情,心酔の感覚が減少した.
- これらの傾向はパートナーのいる人でも別れたばかりの人でも同様に確認された.
- アップレギュレーションは,LPP(快・不快の刺激に対する脳波の成分)を300~400ms上昇させ,ダウンレギュレーションによって700~3000ms減少させた.
だったそう.要するに,現段階でパートナーとの関係がどんな状態であろうと,リアプレイザルを行うことによって,主観的にも客観的にも感情をコントロールできるようになるってことがわかったわけです.
ネガティブな方向にもポジティブな方向にも制御できるのはすごいですな.
研究チーム曰く,
長期的な関係性は,時間をかけた愛情や心酔感レベルの減少によって脅かされるから,恋愛感情のアップレギュレーションは,長期的な関係性を安定させる役に立つかもしれない.
(中略)
これ(ダウンレギュレーション)は,愛情が強すぎる場合に重要な指針を与えてくれる.(…)この結果は,例えば初期の段階で恋愛感情が一方的なものであったり,他人のパートナーを押しつぶしてしまうような場合に,リアプレイザルを用いた愛情のダウンレギュレーションは心酔感の減少に有益だろう.
とのこと.適切なレベルの愛情ではないときには,リアプレイザルによって感情をコントロールできるようになって,いい関係を維持するために重要であるのだ,と.
というわけで,恋愛感情に振り回されがちな方には結構効果的なワザだと思われますんで,ぜひお試しあれ.恋愛感情以外にもいろいろ応用できる方法ですし,身に着けておいて損はないかと.
もっとも,短期的にはコントロールできるようになるとはいっても,この研究からは長期的にはどこまで影響があるかわかりませんので,そこのところはご注意を.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!