進化論とかから見ると,「人間の人生に意味なんてない!」「ただの熱循環の一部に過ぎないのだ!」みたいな結論になりがちですが,とはいえ何にも人生に意義を見出さずに生きてはいられないのが人間であります.
実際,人生の意味感を高く感じている人のほうが,
- 寿命が長い!
- 身体,メンタル,認知機能の状態がいい!
- 人間関係が良好!
- 出世しやすい!
みたいなことが確認されていて,よりよい人生を生き抜くためには,「自分の人生には意味があるなあ」って思えることが結構大事だったりするんですよね.
といったところで,ラトガーズ大学などの研究(R)では,「ルーティンこそが人生の意義を高めてくれるんだ!」って結論になっていて参考になりました.
ここでいう「ルーティン」の定義とは,「連続した行動の自動的なセット」とされていて,日常的に行う行動体系のことですな.ご存じの通りでしょうが,例を挙げるとすると,
- 出勤前の身支度
- 休憩時間には必ず特定の席でコーヒーを飲む
- 帰宅後の家事
とかがあげられましょう.自分の中のマイルールみたいな感じですね.
で,研究によれば,この「ルーティン」によって,人生の意義が左右されるんだそう.研究は2つの実験を通して行われておりまして,それぞれ簡単に見ていくこととしましょうー.
実験1
まず最初の実験では,317人のアマゾンメカニカルタークで働く男女を対象に,以下のような項目に回答してもらいました.
- 日常のルーティン行動の頻度,割合
- ルーティンに対する考え方,好み
- マインドフルな注意力度合い
- 人生の意義
そのうえでこれらの間の相関をチェックしたんだそう.基本的には,「ルーティンへの好みと人生の意味感の関係」を調べたわけです.その結果何がわかったかと言いますと,
- ルーティン行動に対して好意的な印象を抱いているほど人生の意義を高く感じている傾向がみられた.
- ルーティン行動を邪魔されることと人生の意義との間には相関がみられなかった(つまり,人生の意義において大事なのは,無秩序の不存在ではなく,ルーティンの存在であると考えられる).
- 人生の意義と,ルーティンを好いていること,マインドフルネスにはそれぞれ正の相関がみられた.
みたいになっています.ルーティンを行う際に,マインドフルになることで,それ自体によって人生の意味感が高まるとともに,ルーティンへの好感が高まって,それによりさらに人生の意味感が高まるかもしれない,ってわけですな.やっぱマインドフルすげぇ.
実験2
続いてもう一つの実験では,85人の大学生を対象に,参加者のスマートフォンに一日6回届く,以下のような項目の簡単な質問に1週間回答してもらいました.
- 今どんな行動をしていたか?
- その行動のルーティン度合いはどのくらいか?
- 今の気分はどんな感じか?
- 人生の意義をどのくらい感じているか?
といった感じで,個人の生活・感情を追跡することで,実験1の内容を拡張し,「本当にルーティン行動をとることが人生の意義につながっているの?」ってポイントを調べたわけです.
それでどんな結果が認められたかと言いますと,
- ルーティンタスクに取り組んでいた時ほど人生の意義を高く感じている傾向があった.
- この傾向は平日,休日ともに変わらなかったし,性別,年齢等によっても影響を受けなかった.
だそうです.実験1を見るだけでは,「ただルーティンが好きな人が人生の意義も見出しがち」なだけじゃない?とも考えられますが,実際,ルーティン行動をとることによって個人のベースラインよりも人生の意味感が高まるんだ,と.
研究チーム曰く,
この発見が示していることの一つは明らかで,我々がしばしば人生の意義において重要だと考えている人間関係,達成,ポジティブな体験は完全にはこの重要な体験をあらわしていない.人生の意義とは必ずしも並外れたものだとは限らず,適法な世界でありふれた体験の中にも表れるものなのだ.
とのこと.人生の意義なんて言うとたいそうな印象を抱きがちですが,実際は日常の行動一つ一つの中にそのヒントはたくさん隠されているってわけですな.
ちなみに,人生の意義の要素において,ルーティンに対する好意と最も相関が大きかったのはつながりの感覚だったそうで,この感覚が,人生の目的や,重要性の評価にも影響されたのではないか,とも考察されていました.
人生はマインドフルネスのトレーニングの機会にあふれている!とはよく言われますが,この結果もそれに類するところがあるなーと感じました.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやコメント欄などでご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!
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