デジタルデバイスってどうなん?って議論はまだまだ決着がついていません.殊子供の学習に関しても,スクリーンタイムが長くなると,
- 学業成績が下がる!いや下がらない!
- 実行機能が低下する!いや別に関係ない!
みたいにどっちのデータもあって,はっきりした結論が出ていないんですよね.
で,今回のデータ(R)では「スクリーンタイムや読書の時間は脳の領域間の機能的な結合に影響を及ぼすか?」って問題を扱っております.機能的結合ってのは,「特に何もしていないときでも脳は活動していて,その時特に活発に活動している脳の領域間」のことです.デフォルトモードネットワークともいわれるやつですね.
要するに,「スクリーンタイムや読書時間によって言語処理とか頭の良さが変わってくるか?」って点を調べたわけですね.
ということでチームは8歳から12歳の子供19人を集めまして,まずはその保護者から子供のスマホやテレビ,パソコンなどのスクリーンタイムと読書時間を調査しました.そして子供たちに言語的,非言語的知性を調べるためのテストに答えてもらったうえで,MRIを用いて,彼らの脳の領域間の機能的な結合の状況が調べられました.
で,その結果は以下のようになりました.
- 保護者の報告によれば,子供の1週間のスクリーンタイムは平均3.89時間(一般的な報告より少ない),読書時間は4.00時間だった.
- 読書時間の長さは,文字の読みと言語処理にかかわる領域,視覚と認知コントロールにかかわる領域間のつながりの強さとの正の相関がみられた.
- スクリーンタイムの長さは,文字の読みと言語処理,認知コントロールの領域間のつながりの強さと負の相関がみられた.
どの領域も読解,実行機能にかかわる重要な領域です.つまり,読書時間が長く,スクリーンタイムが短いほど読解にかかわるネットワークが活発に働いていたということですね.
研究チーム曰く,
伝統的な読書の時間とスクリーンベースのメディアを消費する時間が機能的な脳領域の結合に異なる効果を与えていたことは,それらが脳の発達にはっきり異なる影響を与えているかもしれないことを示唆している.
とのこと.神経生物学的に見ると,子供の言語能力の発達が期待されるこの時期には読書時間を増やし,逆にスクリーンタイムは少なめにしておいた方がいいかもってことっすね.
もっとも観察研究をベースにしたメタ分析(R)なんかを見てみると,
- ゲームやテレビの視聴時間は学業成績の低下と相関がみられた
ってことが報告されているんで,必ずしも電子媒体での読書もよくない!ってことにはならないかと思いますんで,そこのところはご注意を.
まあまだこの辺の分野ははっきりした結論がありませんので,スクリーンタイムとの付き合い方はいろんなデータをもとに地道に模索していくしかないよなーとか思っております.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterなどでご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!
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