「スマホとかの画面の見過ぎで目が悪くなる!」みたいな話はよく聞くところですが,それって本当なの?みたいな点を調べてくれた論文(R)が出ておりました.
これは,「デジタルのスクリーンタイムが長くなると近視を発症するのか,また,近視の進行を促すのか?」って点を調べた先行研究15件をまとめた系統的レビューになっております.参加者の年齢は3~19歳の子供がメインで,スクリーンタイムの長さと近視の発症率,近視の進行率の相関をチェックしてくれたんですな.参加者総数は49,789人となっていて,なかなか大規模なものになっています.
ちなみに15件のうち9件が横断研究,6件がコホート研究となっていて,参加者の62%が中国人,20%がインド人になっています.
で,先に結論を言いますと,
- スクリーンタイムと近視の間には関係があるかよくわからん!
みたいになります.というのも,スクリーンタイムが近視に影響あった!という報告もあれば,別に関係なかったよ!という報告も半々くらいあって,どちらかに定まらなかったんですよね.
ちょっと詳しく見てみると,
- 近視の発症を調べた研究のうち,6件がスクリーンタイムと優位な相関がみられたと報告しているのに対し,5件が相関がみられなかったと報告している.
- 近視の進行を調べた4件の研究のうち,1件のみ,週に4時間以上コンピュータ・ビデオゲームをした子供との間で相関がみられたことを報告している.
- 近視発症のリスク比を報告した5件の研究をもとにメタ分析を実施したところ,やはりスクリーンタイムとの間で優位な相関は見られなかった(OR=1.02, 95% CI: 0.96-1.08).
みたいになってます.近視に影響があるのかないのか,一貫した報告が得られていない,ってわけですな.
近視が東アジアを中心に広まっていることは有名ですが,それはデジタルデバイスの普及の前から確認されていて,教育の変革とか外で遊ぶ時間が減ったからではないか?みたいなことが原因として考えられていたりします.過去のメタ分析(R)でも,1日の間の外で過ごす時間が1.25時間増えるごとに近視のリスクが50%も低減する!ってことが確認されています.
で,だったらスクリーンタイムが増えることで間接的に外で遊ぶ時間が減って,それで結果的に近視のリスクにつながるということが十分考えられます.
実際,スクリーンタイムと近視のリスクとの間で優位な相関が確認できなかった研究でも,全体的に近視の子供のほうがそうでない子供よりもスクリーンタイムが長い傾向もみられています.
てことで,お子さんをお持ちの方は,スマホやパソコンにくぎ付けのお子さんには,少し外に出るように促してみるのもいいんじゃないでしょうか.目が悪くなると一生大変ですからね.
また,大人の方は,この結果がどのくらい大人に当てはまるかわかりませんし,すべて自己申告のデータなんで,どのくらいのずれが生じるかもわかりません.とはいえ,外に出て,自然に触れあったりすることはメンタルとかには確実にいい影響がありますし,「最近スマホやパソコンを見すぎているなー」って思ったら少し外に出てみて,「ついでに目もよくなったらいいなー」くらいに思っていただくといいんじゃないでしょうか.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterなどでご連絡いただけると嬉しいです
それではっ!
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