世の中にはいろんな勉強方法がありますが,現在科学的に最強とうたわれるのが「検索練習」です.検索練習っていうのは,クイズ形式にしたりとかして,「学んだことを定期的に思い出す」テクニックのことを言います.
その効果は単に長期記憶につながる!とか言うだけではなくて,メタ認知が向上するとか,学んだ知識を他の分野に応用したりできるようになるとか,ワーキングメモリーが向上するとか,あらゆるメリットがあるんですよね.
その実践方法はいろいろありますが,とにかく「思い出そう」とする時間を設けることが肝とされるわけです.
その中の一つとして,模擬的なテストを行う,という方法があります.
これはテキストを再読したり,まとめたりするよりも,テストを受けることによってより記憶が定着する,という手法で,いわゆる「テスト効果」と言われたりするやつです.
で,今回の研究(R)はそんな最強の検索練習の一つである「テスト効果」って,勉強するときの気分によって変わるんじゃね?っていうポイントを調べた内容になっておりました.
テスト効果がすごいのはわかるけど,過度なストレスやプレッシャーを抱えた状態ではベストなパフォーマンスを発揮できなかったりするし,心理的な要素が記憶の定着をある程度左右する.だったらメンタルの状態によってテスト効果にも影響が及ぶのではないか?と考えたわけですね.
実験では,対象者を,ポジティブ,ニュートラル,ネガティブな気分に誘引したうえで,"the sun"とか,"sea otters”といった単語を記憶してもらったらしい.その際に,参加者を以下の2つのグループに分けました
- テストグループ=一度勉強してもらったのち,その内容をテスト形式で確認してもらう
- 再チェックグループ=一度勉強してもらったのち,その内容をもう一度勉強してもらう.
さらに,気分を誘引するタイミングを以下の2つに分けました.
- 一度目の勉強を始める前.
- テスト形式での勉強や再チェックの前.
こんな感じで単語を覚えてもらった後で,1週間後にどのくらい記憶が定着しているかが測られました.
で,どんな結果が出たかと言いますと,
- どちらのタイミングで気分を誘引しても,テスト形式で勉強したグループのほうがただの再チェックをしたグループよりも成績が高かった.
- 気分によって成績に有意な差はなかった.
みたいな感じになりました.やっぱり気分に関係なく,テスト効果は確認されるっぽいですね.
気分によって成績に違いがみられなかった点に関してですが,ほかの研究結果なんかを考慮すると,単に単語を覚えるだけでなく,もっと複雑な,認知的に負荷のかかるタスク(例えば読解力とか)では成績に差が出てくることが予想されます.
でもやっぱり記憶という観点からするとやっぱり検索練習の効果の大きさを改めて確認できる内容であったと思います.メンタルの状態によらず,とにかく「検索練習」を徹底的に行っていると,結局高いレベルで知識が定着しそうですねー.
参考になれば幸いです.それではまた.
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