「日中のパフォーマンスを最大化するために睡眠は大事!」「認知機能を高めるために睡眠は大事!」ということはもはや常識となっています.それに付随して,「学校の成績アップや試験勉強の効率性をあげるためにも規則正しい睡眠が大事!」という認識が広がっているように思います.
で,「じゃあ睡眠によってどのくらい成績が違ってくるのか?」という点を客観的な指標を用いて調べたMITらのデータ(R)が出ておりました.
これは,MITの学生100人を対象にして,一学期の間,睡眠の状態を活動量計を用いて計測し,そのデータとテストや期末試験の結果を比較したものになっております.
この調査に関して研究チームは,
たくさんの調査で学生の睡眠と学業成績の関係が調べられてきたが,それらの研究では睡眠時間や睡眠の質を調べるにあたって主観的な指標を採用しており,一般的には自己申告型の調査が行われてきた.そして,学生の睡眠時間や睡眠の質を図るために客観的な指標を用いたものはとても少ない.
としていて,これは学生の成績と睡眠との関係を客観的に調べた数少ない研究なんだ,と.
調査の結論をまずはざっくりまとめると,
- 睡眠時間,睡眠の質,睡眠の規則正しさによって.成績の違いの24.44%を説明できる.
みたいな感じになっています.約25%というのはすごいっすねー.
細かく見てみると,
- 睡眠時間と成績の間には正の相関がみられた(r=0.38).
- 睡眠の質と成績の間には正の相関みられた(r=0.44).
- 睡眠の不規則さと成績の間には負の相関がみられた(r=-0.36).
- 試験前日の夜の睡眠の指標と成績との間には優位な関係がみられなかった.
- 一方,試験1か月前,1週間前の睡眠時間,睡眠の質は成績と優位な関係がみられた.
となっています.予想通り,睡眠時間,睡眠の質,規則正しい睡眠をとることがよい成績をとるためにも大事,ということですな.また,試験前夜の睡眠は関係ない,という点は面白いと思いました.
研究チームも,
テストや試験前の夜よりも,試験の具体的な内容を教わった期間によく寝ることが大事なのかもしれない.このことから,少なくとも成績という観点からすると,睡眠は内容それ自体を学んだときに重要なのであり,試験前日の夜によく寝ても役に立たないかもしれない.
とコメントしております.
この点を踏まえると,例えば緊張で試験前日の夜によく眠れなかった…というようなことがあったとしても,特に成績には関係がないかもしれません.
寝不足それ自体よりも,「よく眠れなかったから,最大限のパフォーマンスなんて発揮できっこない...」みたいなネガティブな思考のほうが成績の低下につながってしまうかもしれません.
逆に,「緊張してよく眠れなかったってことは,今まで頑張ってきた証拠.一日よく眠れていなくても別に成績には影響はない!」って思っておけば,いつも通りの,自分の持ちうる力を最大限発揮できるんじゃないでしょうか.
また,一回きりなら一夜漬けも,特に睡眠の問題の影響を受けずに十分成績アップに効果を発揮できるかもしれません.
もっとも,いずれにしても,試験1か月前,1週間前から適切な,規則正しい睡眠をとっておくことが前提である点はお忘れなく.
参考になれば幸いです.それではまた.
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