最近は、大学や、高校でも授業のオンライン化が進行し、家で自分のペースで勉強せざるを得ない状況が増えていたりします。
それに伴って、授業における取組の姿勢にも自由度が高くなり、ノートの取り方なんかはその代表例ではないでしょうか。
オフラインでは板書で行われていた講義が、レジュメ等をPDFで配られたりすることによって代用されたり、そもそも資料なしに先生がただ話すだけ、という講義もあることと思います。
そんな中で、授業の内容を頭に入れるため、使える知識にするために、ノートやメモを取る人は少なくないと思いますが、それは、紙のノートに手書きで書くのがいいのか、それともパソコンでタイプして自分なりにまとめるのがいいのか、はたまたその中間的な、タブレット端末のように、PCよりノートの取り方に自由度を持つデジタルデバイスがいいのか、簡単に考えてみたいと思います。
手書きの紙のノートか、PCか?
従来通り一般的な紙のノートに手書きで書く場合と、PCで書く場合とについてまず比較してみたいと思います。
まず、PCでノートをとるメリットとして、以下の3つがあげられます。(R,R)
- ノートをとるスピード
- 読みやすさ
- 検索能力の高さ
この3つに関しては、圧倒的にPCのほうが手書きを上回っていて、文句のつけようがないでしょう。
いくら手書きで速く書こうとしても、今度は字が汚くなって自分ですらあとで読み返せないということも少なくありませんし、あとから類似の事例が出てきたりしたときに、「あれ、これどこかで見たことがあるな」なんて思ったときにも、PCでメモを取っていれば、検索機能によって、一瞬で該当の箇所を見つけることができます。
こう見ると、PCのほうがいいこと尽くしのように思えますが、そう単純でもありません。ノートをとる真の目的として、「知識を使えるものとして定着させること」があげられますが、そのために必要とされる集中力や、記憶の定着率という点ではどうでしょう。
まず、集中力に関しては、PCを使ってノートをとると、どうしても他のアプリケーションや、通知等に注意をひかれてしまって、マルチタスクになってしまうことが確認されています(R)。
マルチタスクというのは、複数の作業を同時に進行するような状態を指します。スマホにおいても「マルチタスク」という言葉が使われますが、それと同じような現象が脳内で行われているのです。
すなわち、複数の異なるアプリを脳内で起動しておいて、あっちこっち行き来している状態です。
この状態では、一つの作業にさける脳内のリソースが大幅に減ってしまいますから、結局生産性が下がってしまうのです。
話を戻せば、PCでノートをとっていると、知識を定着させるためにノートを取りながらもほかのアプリやメール等に気を取られてしまって、ノートをとることに十分に集中できていない傾向があるのです。
また、PCでタイプしていると、正直内容を理解していなくても話をそのまま打ち込むことが可能だったりしますから、注意がそれていることに気づいてすらいない可能性もあります。
次に、記憶の定着について考えると、事実ベースの情報については、PCでも手書きのノートでも、変わらないけれど、概念的な情報については、手書きのノートのほうがより記憶が定着するということが主張されています(R)。
つまり、「2020年に、新型コロナウイルスの流行をきっかけに世界的な恐慌が発生した」というような単純な情報は、手書きでもPCでも変わらないけれど、「日本では、新型コロナウイルスの流行をきっかけに、政府の経済政策の愚策が浮き彫りになり、失業率の増加、それに伴う自殺者数の増加、日本の先進国としての立場からの衰退が起きた」という流れや、その根底に流れるつながりを意識しないといけないような情報に関しては、手書きで書いた方が、より記憶に定着するということです。
ちょっとわかりにくいかもしれませんが、要するに、歴史の語呂合わせのように一対一対応で、ただ単純にそれだけを覚えればいいのが前者で、年号だけでなくて流れまで押さえてはじめて有効な知識となるのが後者、というイメージです。
一対一対応の大量の知識があることも悪くはないですが、それらをうまくつなげて、使える、チャンクとしての知識にするためには、手書きのノートをとる方が有効だということがわかります。
また、ほかの研究では、事実ベースの情報でも、概念的な情報でもともに、手書きのノートでメモしたほうが、よりよい成績を残したという報告もあります(R)。
以上から、手書きのノートとPCでは一長一短あるものの、そのメリット、デメリットを意識したうえで、うまく使い分けることが重要と考えられます。
例えば、PCでメモを取るのは、単なる情報で、手書きのノートでは、流れやつながりが重要な情報を記録する。また、PCを使うときには通知をすべて切るなどして、余計な注意をひかれないようにする、みたいなことがシンプルな方法として考えられるでしょう。
じゃあ、タブレット端末で手書きすればいいのか?
だったら両者のいいとこどり、ということで、タブレット端末に手書きをすればいいのでは?という疑問が浮かぶのは自然でしょう。
タブレット端末なら、自分の手を動かして、自分の字の癖をもって、自由度高くノートをとれる。さらに、検索機能も使えて、持ち運びも楽。
タブレット端末を使った学習の調査はまだ現在進行形というような印象がありますが、ノートパソコンよりも、タブレット端末でノートをとった方が、メールとか、ほかの関係のないことに注意をそらされづらいということが言われているそうです(R)。
PCのデメリットとして、注意がそれやすいこと、記憶に残りにくいこと、があげられましたが、タブレット端末なら、注意がそれにくい可能性があることがわかりました。
それに、タブレット端末で注意がそれやすいようなら、思い切ってその端末は勉強専用ということにして、他の余計なアプリを消したりすれば、気はそれにくい気がします。
実際に大学や高校等でタブレット端末が支給されているところは、そういうルールが定められていたりするそうです。
記憶の定着という点に関しては、手書きをすることによって、手の感覚とか、自分でフォーマットを意識してノートをとるようになることから、多くの感覚や脳の分野を使うことによって、より定着するといわれたりしますが、最近のタブレット端末では、画面をまるで紙のような手触りにすることができたりするので、ほとんど紙と同じような感覚でノートをとることができるのではないでしょうか。
それに、単純な事実ベースの情報については、別途キーボードを接続することによって、高速で情報を記録することができます。
てことで、最初はなれないかもしれませんが、慣れてくれば、タブレットでノートをとることで、効率的に学習、記憶ができるようになるかもしれません。
タブレット端末は情報のインプットという点でのメリットが大きい印象がありますが、インプットした情報の定着という点でも使い方次第で紙と同等、またはそれ以上の効果を残せるかもしれませんね。(おすすめのタブレット関連製品は下に貼っておくので、参考までに。)
参考になれば幸いです。それではまた。