「SNSってどうなん?」ってのは近年ホットな議論でありまして,「メンタルが病む!」みたい話がある一方で,「幸福感が高まる!」みたいな報告もあってデータが錯綜している感じです.
中でも,「クリエイティビティ」に関しても両者の主張が存在しておりまして,例えば否定派の意見を見てみると,
- そもそもSNSで創作活動の時間が削られてパフォーマンスが下がる.
- いいねとか外発的動機にとらわれて,自分の内発的な動機による最大のパフォーマンスを発揮できない.
みたいなことが言われていたりします.後者の問題なんかは特に,モチベーションが続かなくなったり,目先のいいねばかりに注目してしまって長期的な目標を達成できなかったりして深刻な問題になりうるよなーとか思ったり.
といったところで,個人的にはまあ使い方次第なんじゃないかなーとか思っておりますが,2019年の研究(R)では,SNSとクリエイティビティの関係をいろんな要素から検討していて勉強になりました.
この研究では,407人の男女(平均年齢37.78歳)を集めて以下のようなポイントを調べたんだそう.
- ソーシャルメディアの使用時間,頻度
- よく使うプラットフォーム
- 主なソーシャルメディアの使い方や利用目的
- ソーシャルメディアへの依存レベル
- 外向性レベル
といった感じ.これらと,クリエイティビティの関係性を調べたわけですが,クリエイティビティの指標としては以下の2つが用いられたそう.
- クリエイティブな活動の量や質
- 創意的な態度
「創意的な態度」っていうのは,日がなどのくらいアイデアを考えているか?っていう指標で,例えば,「将来やろうと思っているアイデアがある」みたいな質問にどのくらい同意するかを調べたわけです.
その結果,以下のようなことがわかりました.
- ソーシャルメディアの利用時間は,創意的な態度,クリエイティブな活動の質と正の相関がみられた.
- FacebookやYouTubeを積極的に利用(自分でコンテンツを投稿したりとか⇔受け身の利用)する頻度の高さは,すべてのクリエイティビティの指標と正の相関がみられた.
- Twitterの利用頻度の高さは,積極的な利用でも受け身の利用でも,すべてのクリエイティビティの指標と正の相関がみられた.
- YouTubeの受け身の利用は,クリエイティブな活動の量以外のすべての要素で正の相関がみられた.
- Instagramの積極的な利用頻度の高さは,クリエイティブな活動の質と正の相関がみられた.
- ソーシャルメディアの主な利用目的が,「自分のアイデアや意見を主張すること」「特定のトピックの情報を収集すること」「自学自習のため」である人は,目的が「娯楽」「エンタメ」「リラックス」の人よりも高いクリエイティビティを示した.
- 外向性や過度なソーシャルメディアの利用とクリエイティビティの間には有意な関係がみられなかった.
だったそう.
つまり,クリエイティビティの観点からSNSの利用を考えるにあたっては,
- 使い方(受け身なのか積極的なのか)
- 利用目的
- 利用するプラットフォーム
といったポイントをチェックするといいかもしれない,ということがわかります.確かにここら辺をしっかり明確にして利用している人は,クリエイティビティだけでなく,いろんな要素において,SNSによるリスクを最小化して恩恵を最大限享受できそう感じがします.
研究チーム曰く,
私たちの発見は,ソーシャルメディアが必ずしもクリエイティビティにとってネガティブな要素ではないことを示している.むしろ,新しいアイデアやプロジェクトを考えるにあたっての有益なサポートにすらなる可能性を示唆している.
とのこと.言われているほどSNSで創作活動に影響はないのかもよ?っていうわけですな.
とはいえ,一部SNSの利用頻度が依存レベルの高さやクリエイティビティの低下とも相関も確認されていますんで,どうにも油断はできないなーって感じもしております.
てなわけで,とにかく使い方次第!っていうわけですな.もっとも,個人的には,「SNSを使うなら目的をはっきりさせてから使う.なんとなくアプリを開いたりしない」くらいが現段階の落としどころとしていいんじゃないかなーとか思いました.不安感の増加とか幸福度の低下とかへの影響も懸念されますし.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!