運動

汗とシナプス~運動で脳力ブースト!の最新メタアナリシス

「運動で頭がよくなる!」ってトピックについてかなり包括的にまとめてくれたメタアナリシスが出ていたので、軽くメモっておきます。

というのも、ひとえに「運動」といっても、運動の頻度、強度、時間、種類、量、難易度などいろんなファクターがあって評価がなかなか複雑だったりするんですよね。そんななかで最近Shanghai University of Sportの先生方がこれらの点を含めた「FITT-VP」って考えをベースに運動による認知機能への効果をまとめてくれてて、有用でございました。

こちらは54件のRCTをベースに、合計6,000人以上のデータを用いたメタアナリシス。対象とされたのは健康な6~60歳以上の人たちで、年齢別の効果までまとめてくれているのもありがたいっすね。

運動の変数による認知機能への効果

まず、メタアナリシスの結果、すべての種類の運動が認知機能に有意かつプラスの影響を与えることが明らかにされてます。具体的にはこんな感じ。

  1. 筋トレ:このタイプはすべての運動の種類の中で最大の効果量(標準平均差[SMD]=0.51)を示し、認知能力に大きな影響を与えることが示された

2. 運動時間: 中程度以上の運動時間であれば有意に認知機能を高めたが、長すぎる運動よりも適度な運動時間の方がより大きな効果量を示した(SMD=0.42)

3. 運動頻度: 低頻度、中頻度であっても、認知機能にプラスの影響を及ぼした(SMD=0.43)

4. 運動強度: 中等度の強度が最も効果的に認知機能を高める効果を示した(SMD=0.56)

5. 介入の期間: 短期的な介入であっても有意にプラスの効果を示したが、中等度の長さの方がより大きな効果を示した(SMD=0.55)

認知機能の種類別の効果

運動だけでなく「認知機能」もいろいろな種類のものを含むわけですが、本研究では、認知領域別の違いにおいても面白い結果を得られてます。

  • グローバル認知: 有酸素運動は有意な効果を示し、全体的な脳機能を向上させた(SMD=1.13)。中等度の継続時間、頻度、強度、介入期間はすべて、全般的認知を有意に改善した(ただし、過去のメタアナリシスでは、筋トレの方がグローバル認知に効果的、という報告も複数あるので、はっきり優劣をつけられる感じではない気もする)
  • 実行機能: 筋トレ、低頻度、中等度の介入期間(3~6か月)は、実行機能の向上と顕著に関連していた。この認知領域では、有酸素運動と比較して筋トレの方がより効果的であった
  • 記憶: 上記2つの認知領域に比べると効果は小さかったが、ヨガや太極拳のようなマインドボディ運動は、記憶力の増強において高い効果を示した(SMD=0.62)(筋トレがその次)。中等度の頻度(週45分~60分)と高強度の運動は、中等度な介入期間とともに記憶力アップに有意な効果を示した
  • 注意力と情報処理能力: これらの認知領域では、全体的に運動によるプラスの効果が見られたが、統計的に有意ではなかった(研究デザインの不十分が指摘されてた)

年齢別の違い

運動による認知機能ブースト効果は年齢によって大きく違いがみられてて、本研究ではサンプルを6~17歳、18~60歳、60歳以上の3グループに分けたうえで以下のような結果を示してます。

  • 高齢者(60歳以上):このグループは、他の年齢層に比べて運動介入から最も大きな認知効果を示し、特にグローバル認知、実行機能、記憶において顕著であった。この結果は、加齢に伴う認知機能低下に対抗する運動介入の可能性を強調するものであった
  • 小児、思春期、若年成人(6~60歳): これらの群も全体的に運動介入からメリットを受けることができるようであるが、その効果は高齢者ほど顕著ではなかった

ってことで、基本的には年を取るほど運動による認知機能低下の防止、向上が期待できるわけっすね。

生物学的メカニズム

ではなんで運動によって脳の反応が変わるのか?って点についても簡単に触れられてて、年齢別の違いを説明するヒントにもなりえましょう。

  • BDNFと成長因子: 運動はBDNFレベルとその他の成長因子の発現レベルを高める結果、神経の成長と結合を促進する
  • 血流の改善:活発な運動は脳への血流を増加させ、新しい脳細胞の成長の可能性を引き上げる
  • ストレス軽減: 運動はストレスを軽減し、ストレスレベルが低下すると、脳環境がより健康になり、認知機能が向上する

おわりに

ってことで、全体的に言えば、「認知機能を維持、向上させたいなら運動だ!」っていうシンプルな結論ですけど、自分が特に気になる認知領域によって運動の種類や頻度等を決める貴重なヒントになる論文だったんじゃないかと。

ちなみに、その他の知見として、「多成分運動は単独の運動に比べてより効果が強いぞ!」って知見も得られたりします。つまり、有酸素運動や筋トレ、ヨガ等を含む2種類以上の運動から構成される運動はの方が認知機能が大きく向上するぞ!みたいな話っすね。ってことで、余裕があれば多様な運動の種類、強度、難易度を取り入れたほうが認知機能のブーストには効果的っぽいんだけど、十分な時間をとれる方は多くないと思いますんで、ご自身の優先順位に合わせて検討いただくのがよろしいのではないかと。実際、1週間程度の短期的な継続では最も効果が小さいことが示されてて、結局続けられる運動が大事みたいですしねー。

参考になれば幸いです。ではまた―。

おまけ:ビデオで解説!

HeyGen

Capcut

invideo AI

https://ai.invideo.io/watch/Tcoom0hm5Vd

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