アスタキサンチンで運動後のダメージを相殺する
アスタキサンチンといえばサケやエビのほか藻類にも含まれるケトカロテノイドで、抗酸化、免疫調節、抗炎症作用なんかが期待されています。で、最近出てたデータでは、「アスタキサンチンは運動直後に発生するの炎症や免疫機能の問題も解消できるんだろうか?」みたいなところを調べてて面白かったです。
この研究はランダム化二重盲検プラセボ対照クロスオーバー試験で、アスタキサンチンの摂取期間には4週間、毎日サプリメントを摂取してもらったらしい。その後、70%VO2maxで2.25時間走ってもらったうえで、血漿サンプルにどんな違いが生じるのかを調べております。ちなみに、アスタキサンチンカプセルは藻類由来のアスタキサンチン8mgを含んでいるものを使用したらしい。
その結果、
- 2.25時間のランニングは筋肉痛、筋肉損傷、炎症を有意に誘発した
- アスタキサンチン摂取は運動後に生じる82種類の血漿タンパク質の減少の効果を抑制した。これらのタンパク質のほとんどが防御応答、補体活性化、および体液性免疫系応答などの免疫関連機能に関与しているものだった
- また、血漿中のIgM(免疫反応の初期に生成される抗体)は運動後に有意に減少したが、アスタキサンチン摂取によりこの減少をバランスした
って感じだったらしい。要するに、日ごろからアスタキサンチンを多く摂っておくと、運動後の免疫機能をサポートしてくれるかも?ってわけですね。
まあ筋肉痛のレベルとかには影響しなかったみたいなんで、感覚的には効果を実感しにくいかもしれないですけど、激しめの運動を多めにする人は食事メニューのアスタキサンチンを増やしてみてもいいかもしれませんね。アスタキサンチンは体内で合成できませんから。
リバウンドしたら心血管疾患リスクはどうなるの?
減量プログラムに参加した後のリバウンドが心血管疾患リスクとどうかかわるのかを調べたメタ分析が出ておりました。
肥満が心血管疾患や糖尿病などの慢性疾患の主要な危険因子になるのは間違いないところで、減量がこれらの疾患の予防に有効と考えるのは妥当でしょう。しかし、悲しい哉、ダイエットをしても時間がたてば元の体重に戻ってしまうということも多いのが現実でしょう。となると、「いったん体重が減ってもそのあとでまた太ったら心血管リスクへの効果もなくなっちゃうの?」ってのは当然の疑問で、今回の研究ではそこら辺をガッツり調べてくれたというわけですな。
具体的には過体重や肥満の成人を対象に行われた行動的体重管理プログラム(BWMP、食事や運動などの生活習慣の改善をサポートするカウンセリングや教育などを含むプログラム)のランダム化比較試験124件(参加者数合計約5万人)を分析しておりまして、プログラム終了後12か月以上追跡された試験だけを選んだらしい(プログラム終了後の平均追跡期間は28か月)。そのうえで、プログラム終了後での体重変化と、その後の心血管疾患や糖尿病の発症率、コレステロール比率、血圧、HbA1cなどの心血管リスク因子の指標をチェックしたらしい。
その結果、
- BWMPに参加したグループは、参加しなかったグループよりもプログラム終了時点で平均3.2kg多く減量に成功していた
- しかし、プログラム終了後は徐々に体重が戻り、追跡期間中に体重が戻っていく傾向があった。ただ、それでも参加しなかったグループよりも平均1.6kg減量効果が維持されていた
- 心血管疾患や糖尿病の発症率については、それぞれ8件(7889人)と15件(4202人)の試験で報告されており、BWMP群では少なくとも5年間は発症率が低かった。ただ、リバウンドするとその効果は小さくなった。
- 収縮期血圧、コレステロールの比率、HbA1cの低下についても、BWMP群では5年後でも効果は持続していた
だったそう。今回の分析に含まれた試験の22%はバイアスのリスクが高いと判断されてるんですが、これらを除外しても結果に大きな変化はなかったみたい。つまり、時間がたつにつれて多少の減衰はあるにしても、ダイエットプログラムの「遺産効果」は少なくとも5年くらいは残ってたってわけですね。
ちなみに、ダイエットプログラムに成功した後元の体重に戻るまでには5年くらいかかるって報告もあるそうで、きちんと励めば、そこまで「すぐに」体重が戻るわけでもないし、心血管の保護効果も持続するんですな。
てことで、少しでもダイエットの志す方の参考になれば幸いです。
SNSで他人と比較したらやる気が出る?それともみじめに感じる?
SNS上での他人との比較に関するメタ分析が出ておりました。
SNSは他者と自分を比較する無限の機会をもたらしてるわけで、近年では「SNSが害になるのはこの比較のせいだ!」っていう主張も多く見かけるようになってきましたな。で、最近のメタ分析では、48件の先行研究(参加者数7679人)をピックアップし、他人との比較がメンタルの諸要素にどんな影響を及ぼすのかを調べてくれております。
結果的に何が分かったかというと、
- 上方比較(自分より優れていると感じる人との比較)は下方比較(自分より劣っていると感じる人との比較)やコントロールに比べて、ソーシャルメディア利用者の自己評価と気分に負の効果をもたらす傾向があった(g = −0.24, p <.001)
- 具体的には、ボディイメージ(g = −0.31, p <.001)、主観的幸福感(g = −0.19, p <.001)、メンタルヘルス(g = −0.21, p <.001)、自尊心(g = −0.21, p <.001)の低下と関連していた
- SNS上での上位比較への反応は「コントラスト」が支配的であり、それが負の自己評価と感情をもたらしていた
って感じだったらしい。最後のポイントについてちょっと補足しておくと、人は他人と比較を行ったとき、「アシミレーション(比較した相手から刺激を受け、やる気が出ると感じる)」か、「コントラスト(劣等感を感じるか)」のいずれかの反応をとると考えられていて、特にSNSで自分より優れていると感じている人を見ると「この人みたいになれるように頑張ろう!」って思うよりも、「なんて自分はダメな人間なんだ…」って感じてしまうせいでいろいろとネガティブな影響が出るというわけですな。
また、この結果は年齢、性別、研究デザインによって差がなかったそうで、男性より女性の方が、中年より若年層の方が影響を受けやすい、みたいなステレオタイプとは異なる結果が得られてる点も面白いっすね。基本的にその人の属性によらず上方比較はメンタルをダメにしちゃうんだ、と。
ちなみに、ある研究ではSNSを普通につかっているだけでも自然と上方比較的な視点に移行してしまう、みたいな結果も出ているそうで、私も気をつけなきゃな。。。と思った次第です。