「自然の中に身を置いたり,作業場所に緑を置くことによって集中力や生産性が高まる!」っていう話は有名.さらに最近では,「一回自然の中で勉強すれば,その効果は室内に戻っても続くのだ!」みたいなことがよく言われるようになりました.
自然の中で勉強すると,ストレスが下がり,注意力やモチベーション,勉強への興味が高まる,ってことが多く確認されてきたわけですが,その効果って自然から離れても持続するんじゃない?っていうことですね.
そんなわけで今回は,「自然の中の勉強すれば,屋内に戻っても集中力が持続する!」と言われる発端になった研究(R)についてメモ.
これはイリノイ大学などの実験で,小学3年生の子供300人が対象.各クラスの子供たちは,週に1回,以下の2つうちのいずれかの状況で授業を受けてもらいました.
- 5分かけて緑の多い屋外に移動→30分の授業を受ける→5分かけて教室に戻る
- いつも通りの教室で40分の授業を受ける
その後,各クラスの子供たちには,5分間の休憩をはさんだのち,教室でいつも通りの授業を20分間を受けてもらい,この時の子供たちの集中度合いを採点したらしい.
採点のしかたとしては,
- 教師の主観
- 生徒の主観
- 教師が生徒に注意した回数(「静かにしなさい!」みたいな)
- 授業の様子を写した写真をみた第三者の評価
といった要素からチェックしたそう.
こんな感じの実験が10週間,いろんな時間帯で,いろんなトピックの授業で行われました.
その結果をざっくりいうと,
- 自然の中で授業をした生徒は,その後の授業において集中力が高かった!
だったそう.集中力の各指標を見てみると,「生徒自身の自己評価」以外のすべての項目で,子供たちの授業への態度のスコアが高かったらしい.
もう少し細かく見てみると,
- この効果は授業をした教師によらず確認され,さらに10週間にわたって一貫して確認された
- 効果は非常に大きくて,自然の中で授業を受けたグループでは,集中力のスコアが2倍程度高く,教師から注意を受ける回数は約半分になっていた
みたいな感じで,相当大きな影響が表れていたらしい.統計的にも実践的にも意味のある数字になっていることがわかります.
もっとも,「それって移動のために歩いたからじゃない?」みたいな意見もあるでしょうが,他の研究を見てみても,数分程度,週一で歩いたにしては大きすぎる数字らしい.
とはいえ,少なからず運動が影響している可能性もありますし,周囲の環境音や状況が大きく変化したこととかいろんな要素が複雑に絡み合っているんでしょう.
研究チーム曰く,
状況や人によってどのくらい効果が変わってくるかを一般化することはできないが,この研究で示された一貫性や効果量は,自然の中での授業が幅広い設定において試してみる価値があることを示唆している.
とのこと.この実験の結果だけを見ても,実際,比較されたすべてのペアにおいて自然グループの取り組みのほうがよかったわけではないけど,大半においていい影響がみられたし,その影響が非常に大きいことを鑑みれば,やってみる価値は十分にある,と.
さらに,
この結果は,自然の中で授業を受けると,子供たちは授業のカリキュラムを学習すると同時に,学習の能力を回復する,つまり,「フライトの燃料を補給す」ることが可能であることを示している.
ともコメントしております.自然の中での勉強によって学習のための脳のリソースが回復しているかも,っていうのは面白いですな.
そんなわけで,ストレスの解消等だけでなく,「その後の」勉強や作業の生産性をあげるためにも,公園に行って読書をしてみたり,作業スペースに観葉植物を置いてみるなど,自分に合った方法を探ってみるといいかもしれません.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!