誰であっても生きていくうえで人に頼む場面はたくさんあるはず。となれば「どうやって頼めば”Yes”を引き出す確率をあげられるか?」っておくのを知っておくのは有用でしょう。
で、コーネル大学などの最近の研究(R)では、「頼みごとをするときにどの媒体を使うのがいいんだろう?」ってことを調べてくれていていい感じでした。OKをもらう確率を上げるには面と向かって話したほうがいいのか、それともメールで情報を整理して伝えたほうがいいのか?みたいな話っすね。
まあこのトピックについては20年以上前から研究されていて、基本的には、
- メールよりも直接会ってお願いしたほうがOKをもらえる確率が上がる!
- でも多くの人はメールでも大して変わんないんじゃない?と対面の威力を過小評価しがち
ってことが確認されているんですよ。ある実験では、「メールに比較して、対面でお願いすると予想していた34倍も要求を受け入れてもらえる確率が高かった!」なんて結果も出ていたりして、対面のポテンシャル凄い……とか思うわけです。
そんな中でこの新しい研究では、「メールじゃなくて電話とかビデオ通話とか別の媒体だとどう変わってくるの?」といったところを探ってくれております。文字情報じゃなくて声とか映像を入れたら対面と同じくらいの効果が発揮されるのか、それともメールと同じくらいの効果しかないのだろうか、と。
ここでは、メインの実験が2つ行われていて、おおよそのデザインはこんな感じです。
▼実験1
- 144人の参加者を集めて、全員にはそれぞれ5人の友達に指定された頼みごとをしてもらう
- 頼みごとをする際、以下の5つの方法のいずれかを使うように指示。(ⅰ)対面(ⅱ)ビデオ通話(ⅲ)音声通話(ⅳ)ビデオメッセージ(ⅴ)音声メッセージ
- 5人中何人が頼みを聞き入れてくれるかを予想してもらう
- 1週間以内に返答をもらってきてもらって、実際には何人がOKしてくれたかをチェックする
▼実験2
- 298人の参加者に協力を頼む
- 基本的に実験1と同様の操作を行ったが、友人にお願いする媒体を以下の3つのいずれかに指定した(ⅰ)電子メール(ⅱ)音声通話(ⅲ)ビデオ通話
- OKをもらえる割合の予想と実際の結果を比較する
いずれの実験でも、お願いするときにどんな媒体を使うかによってYesを引き出せる確率の予想と結果を分析したわけですな。頼みごとの内容としては、条件の一貫性を保つために全員、半頁分くらいの文章の校正を頼んだそうな。
でもって、その結果がどうだったかといいますと、
▼実験1
- 実際にOKをもらえる確率は、対面で直接お願いした場合が圧倒的に高かった
- それ以外のビデオ通話、ビデオメッセージ、音声通話、音声メッセージではOKをもらえる確率に有意な違いはなかった
- しかし参加者の予想では、ビデオメッセージ、ビデオ通話は対面と同じくらいの確率でOKをもらえると考えていた(つまり、顔が見えてさえいればOKをもらえる確率が高まると予想する傾向があって、この点で実際の結果とのずれが大きかった)
▼実験2
- 実際にOKをもらえる確率は、メールよりも音声通話、ビデオ通話の場合の方が有意に高かった
- 参加者も通話の方がいいだろうと事前に予想していたが、実際には媒体によって予想以上の違いが見られた(つまり、予想してた以上に通話の方がOKをもらえる確率が高かった)
みたいになります。要するに、頼みごとをした場合に実際にOKをもらえる確率が高い媒体をランキング形式で並べてみると、
- 直接会ってお願いする
- ビデオ通話、ビデオメッセージ、音声通話、音声メッセージ(これらは同じくらいの確率)
- 電子メール
って感じになります。いくら画面越しに顔が見えていようと、物理的に体が目の前に存在しているときに比べたらOKをもらえる確率は劣ってしまうわけっすね。以前から言われていることですけども、やはり対面の場合の方が断るのが気まずいからでしょうかねー。
ただし、この研究でもっと重要なのは、
- どちらの実験でも、どのチャンネル(手段)がどのくらい有効なのかを正確に予測できていなかった!
ってことでしょう。つまり、「対面でもzoomでもOKをもらえる確率は変わらんだろう」「メールよりは電話の方がいい気はするけど、まあそこまで影響はないだろう」って感じで、いわゆる「予測エラー」を起こしちゃうわけですね。
どの手段でお願いするか?を決めるときには、「実際にOKをもらえる確率が高いのはどれか?」ではなく、結局「OKがもらえる確率が高そうなのはどれか?」っていうあくまで”予想”に基づく判断になるわけです。
なので、「まあメールでもいいか」「会いに行くのは面倒だから電話くらいすればいいだろう」くらいに思った場合には、不注意にチャンスを損なってしまう可能性があります。頼みごとをする媒体を選ぶ際には、「対面や他の手段が持つパワーを過小評価してしまってないか?」ってのを意識しておくといいかもしれないですねー。
参考になれば幸いです。それではまたっ!