「塩の取り過ぎが身体によくない!」なんてのは常識。昔から高血圧や心疾患、早死にのリスクにつながるとさんざん言われ続けてきたのはみなさんご存じの通り。
一応確認しておくと、食塩に含まれているナトリウムの過剰が血管にネガティブな影響を及ぼすと考えられているんですよね。
同時に、不足することでこれまた血圧に悪影響が出るといわれているのが「カリウム」。
そこで近年増えているのが、塩化ナトリウムを塩化カリウムに置き換えた、俗にいう「減塩しお」。
実際、ナトリウムで血圧が上がり、カリウムの経口摂取で血圧が下がる!なんてRCTもあったりして、ナトリウム過剰の問題とカリウム不足の問題を一気に解決できるんじゃね?とか言われてるんですな。
とはいえ現段階では、「減塩しおが長期的にもメリットにつながるのか?」「不整脈等の危険性はないのか?」みたいな問題に関しては十分なデータがまだまだそろってない状況なんですよね。
そんなところで新しい研究(R)は、そこら辺の問題に関して重要なデータを示してくれていて勉強になりました。
カリウム代用塩で心血管系が健康になる?危険性は?
これは、中国の5つの省にある600の村を対象とした長期的かつ大規模な研究となっておりまして、実験デザインはこんな感じ。
- 各村から、脳卒中歴がある、または高血圧の65歳以上の男女を35人ずつ集める(合計20,995人)
- 600の村のうち、半数の村にはカリウム代用塩(塩化ナトリウムが75%、塩化カリウムが25%)を無償で提供し、残りの半数の村ではこれまで通り100%塩化ナトリウムの食塩を使って料理や食品の保存をしてもらう
- 約5年の追跡期間の後、脳卒中や心血管イベント、高カリウム血症(安全性の指標として)をチェック
代用塩グループの人たちには、なるべく100%塩化ナトリウムの塩を控えてもらって、血管の病気リスクの違いとともに、塩化カリウムを用いることの危険性まで調べたんだそうな。
それで、どんなことがわかったかと言いますと、
- コントロールグループに対して、代用塩グループにおける24時間尿ナトリウム排泄量は350mg少なく、一方カリウム排泄量は803mg多かった。また、血圧は3mmHg程度低かった
- 代用塩グループでは、脳卒中の発症リスクが14%低かった。また、ACS発症リスク、血管関連の死亡リスクはそれぞれ13%、12%低かった
- 一方高カリウム血症リスクに関しては両グループで有意差は確認されなかった
って違いが出たんだそう。つまり、塩化ナトリウムの一部を塩化カリウムに置き換えた代替塩を用いるようにすることで、血管系のリスクが低減したけど、カリウム過剰に関連するリスクも増えなかったわけっすね。
で、塩チェンジしたほうがいいの?
研究チーム曰く、
今回の試験で確認されたプロテクション効果の大きさは、最近のモデル研究(R)で想定されたものと同様であり、中国の全人口が代替塩を使用することにより、毎年365,000件の脳卒中、461,000件の早期死亡、1,204,000件の心血管イベントを回避できると考えられる。
とのことで、食事に使う塩を代替塩にするだけで心臓や血管に大規模なメリットをもたらしてくれる可能性があるのだ、と。
とはいえこの研究にも限界はいくつかありまして、
- 若者や血圧値が健常の人にも同様の効果があるかはわからない。むしろデメリットが発現する可能性もありうる
- カリウムとナトリウムの最適なバランスがわからない
- 実験対象となった田舎の村と他の地域の人々の食習慣は大きく異なる(例えば、食事中に加工食品が占める量とか)
って感じで、安直に「家庭の料理では塩化カリウムに置換すれば万事解決!」とはいかないのが現実。しかも外食でもしちゃえば1食で塩化ナトリウム10gとか余裕で入ってたりしますしねー。
まあそんな感じで現状ではまだ「〇%を塩化カリウムに置き換えてみよう!」とは積極的に勧められる状況ではありませんで、現段階のガイドラインとしては、
- 引き続き塩化ナトリウムの量は1日5g以下を目指す
- 野菜を大量に食べてカリウム不足にはならんようにする
- カリウム過剰の問題等には気を付けつつ、適当な割合で置き換えてみるのもありかも(腎臓に問題のある方なんかは特に注意が必要)
といった感じで、置き換えよりもまず塩の摂取量を減らして野菜でカリウムをとる、という方向性の方がベターなんじゃないかなーとか思っております(個人の感想です)。
私はそもそも家であまり塩を使ってないんですけど、ちょっと味が気になるので、塩化カリウムを買ってみようかなーとか考えてます。そんな高価なものってわけでもないですしね。
参考になれば幸いです。質問やコメントなどありましたらTwitterなどでご連絡いただけると嬉しいです。
それではっ!