SNSでのミソジニスティックな発言と現実のDV・FVの関係
「SNSでのミソジニスティックな発言って現実の家庭内暴力に関係してんの?」みたいな研究(R)が出ておりました.
「ミソジニー」ってのは,最近よく耳にすることが多くなった言葉ですが,一応どういう意味か確認しておくと,アメリカ心理学会によれば,「女性に対する嫌悪や軽蔑」と定義されています.日本では「女性蔑視」などと訳されていたりしますね.
ミソジニスティックな思考や態度が女性に対する性的,身体的,精神的な攻撃と相関していることは,昔から多く報告されていて,年齢や収入,地域を問わず確認されていたりするんですよね.
で,今回の研究では,「SNS上でのミソジニスティックな投稿が多くなるほど家庭内暴力が増え,さらに将来の家庭内暴力を予測できるんじゃないか?」ってことを調べたみたい.
これはメルボルン大学などの研究で,どんな調査だったかをざっくりまとめると,
- 18億件以上のツイートから,ミソジニスティックな投稿16,791件をピックアップして,投稿者の住むエリアによって400以上に分類
- FBIに報告されたDVやFVの数と,ツイートの数を比較
- アルコール消費量や収入レベル,年齢など,関係してそうな因子を調整
みたいになっております.ミソジニスティックな投稿ってのは例えば,「女性が嫌いだ」「女はキッチンに戻れ」「このだらしない女め!」みたいな感じ.Twitterのビッグデータを使って,こういう投稿が多い地域ほど家庭内の暴力が横行しているんじゃないのか?って考えたわけっすね.
研究結果
それで,どんなことがわかったかと言いますと,
- 相関回帰分析によれば,ミソジニスティックなツイートが多い地域ほどDVやFVが多く報告されていた
- 交差遅延モデルによれば,その他の要素を調整した後でも,ミソジニスティックなツイートは1年後のFVやDVを有意に予測していたが,その効果量は小さかった(0.16)
- 1年後のDVやFVを最も強く予測していたのはアルコールの消費量だった(0.70)
みたいになっております.DVやFVが警察等に報告されない例も多い点を考慮すると,上振れも結構あるのかもしれません.
要するに,女性蔑視的なツイートが多い地域では確かに家庭内暴力が多く起こっている傾向があるけど,将来のDV等を強く予測することまではできないかもって感じ.とはいえ,飲酒量とかと合わせて分析すればある程度強力な予測ツールになるかもしれないっすね.
まとめ
研究チーム曰く,
我々の研究は,ビッグデータを用いて,2年間にわたるミソジニスティックなツイートから家庭内暴力を予測するという初めての試みだった.そして,この結果は,ソーシャルメディアにおけるコンテンツをモニタリングし,ユーザーの位置情報を用いることで現実世界のバイオレンスを先読みすることができる可能性を示唆している.
とのこと.まあこの結果だけから,「女性蔑視のツイートしているから現実にも暴力的だ!」というのは尚早でしょうが,パートナーを選んだりするときには注意したほうがいいかもなーって思いました.(たとえ手をあげられなくても,そもそもそういう思考を持つ人と一緒に過ごすのが幸せかという問題は置いておいて)
また,周囲の人の影響を強く受けることは避けられませんので,新しく住む場所を決める際なんかには,客観的な事件の発生件数だけでなく,その地域の人の投稿とかをチェックしてみるのもありかもしれないっすね.
アメリカでは家庭内暴力の被害者の70%以上が女性ってことで,今回の研究ではミソジニーが対象とされましたが,逆にミサンドリーにも同様に当てはまるのかとか,他のSNSでも同様の傾向がみられるのかとか,日本でも同様に当てはまるのかとかはわかりません.まあでも程度の差こそあれその可能性は十分あるんじゃないでしょうか.やっぱSNSっていろんな情報が詰まってんだなーって改めて思いました.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!