SDGs,ESG投資, みたいに,「環境に配慮した行動をとろうぜ!」っていう風潮が近年急速に強まっている気がします.
それは企業の活動においても同様に当てはまりまして「これはリサイクル可能な材料から作られています!」みたいな表示はいたるところで見かけます.私は,最近,認証マークやラベルにいろんな種類があってよく混乱します.
そんな中で新しい研究(R)では,「環境にやさしい製品とそうでない製品の間で消費体験にどんな違いがあるの?」みたいなポイントを深堀してくれておりました.
まずは研究チームのコメントを見てみると,
私たちは,実際の消費の状況における5つの実験を通じて,グリーンな製品が(従来の製品に比べて)消費体験に伴う享楽を高めることを示す.
私たちはこの効果を「グリーンコンサンプション効果」と呼び,この効果は,ほっこりする気持ちによって誘発されることを示す.この気持ちは,向社会的な行動の後の自己に関するよい感情のことを意味する.
とのこと.環境に配慮した製品を使った方が自分に対する評価が向上して,消費活動にポジティブな影響を及ぼすんじゃない?それを「グリーンコンサンプション効果」と呼ぼう!ってことですな.
実験の内容を超ざっくりまとめると,
- リサイクル可能なヘッドホン,または普通のヘッドホンを使って音楽を聴いてもらう.
- 音楽を聴いた前後の気持ちの変化や,音楽に対する評価,商品を買いたいと思ったか,いくらならお金を出すかといった要素をチェック
みたいな感じ.さらに,5つの実験を通じて,どんな要素が「グリーンコンサンプション効果」に影響をもたらすのか?っていうのを複数の視点から調べたらしい.
ちなみに実験では,ヘッドホン以外にも,植物由来の材料から作られた食器洗剤による食器洗いの体験への影響みたいな点も調べたそう.
で,実験の結果どんなことがわかったかと言いますと,
- グリーンな道具を使った方が,消費経験に伴う享楽のレベルが高かった.つまり,リサイクル可能なヘッドホンを使った方が音楽をより楽しみ,植物由来の洗剤を使った方が食器洗いに高い喜びを感じていた.
- この結果は,グリーンな製品を使った時に「ほっこりする気持ち」や,社会的な価値を感じることに由来していた.
- また,グリーンな製品のほうが,購入したいと思う確率が高く,高いお金を払ってもいいと答えた.
- 社会的に孤立している,自分の社会的な価値が低いと感じている人ほどグリーンコンサンプション効果の影響が大きかった.
- ただし,商品の環境に対する恩恵が小さいと評価した場合には,グリーンコンサンプション効果の影響は小さかった.
みたいになっております.要するに,
- 環境に配慮した製品を使ったほうが,自分は社会的に価値のある人間だと思う.
- いい気持ちになる.
- 消費活動を楽しむようになる!
ってこと.しかも,自分自身で気に入って使った場合ではなくてもこれらの傾向がみられたそうで,相対的にではなく絶対的に環境にやさしい商品を高く評価し,それに伴う経験をポジティブに評価していたみたい.
当該商品だけではなく,さらにそれを使った活動に対する評価も向上する,ってのは面白いポイントですね.つまり,「リサイクルできる箸や食器,グラスを使えば食事やお酒をもっとおいしく感じるかも!」みたいなこと.
さらに,孤独な人ほどグリーンな製品に高い価値を見出す!っていうのも興味深いです.環境に配慮した製品を使うことで帰属感が高まり,自分に価値を見出せる,ってわけですね.やっぱり孤独感とか社会的に隔離されているみたいな感覚は,実際の友達の数とかじゃなくて認知の問題が大きいんだなーみたいなことを実感しました.
研究チーム曰く,
この研究は,マーケッターはグリーン化を進めることによって顧客の消費体験をよりよいものにすることができることを示唆している.
例えば,映画館で(従来のもではなく)リサイクルできる3D眼鏡を提供し,ジムで(従来のものではなく)環境にやさしい道具を導入し,レストランで(プラスチック製ではなく)竹製の箸を使うことによって,顧客の体験を向上させることができる.
とのこと.環境に配慮した製品のほうが多くのお金を出してもいいと判断したことから考えて,多少のコストがかかったとしても,グリーンな製品を用いた方が売り上げとしても向上するかもしれない,と.
もちろん,「じゃあ,環境にやさしい文房具を使えば勉強が楽しくなるのか?」みたいな点はわかりませんで,体験の種類によって影響は大きく異なるでしょう.とはいえ,消費者側としては,「プラシーボでいいからポジティブな効果があるといいなー」くらいに思って生活の中に,環境にやさしいものを取り入れてみるのは十分ありだと思います.特にマイナスの影響はないでしょうし,何より環境を保護することにつながりますしね.
というわけで,生産者の方もわれわれ消費者も,環境にやさしい商品を取り入れてみては?ってことで.参考になれば幸いです.
質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!