「地中海式ダイエット」がここ数年の食事スタイルの界隈で人気になっているような感じがします.地中海式ダイエットってのは,イタリアとかギリシャとかの伝統的な食事法で,心臓病やがんといった病気のリスクを下げたり,睡眠の質が改善したり,みたいないろんなポジティブな効果がデータとして多く確認されていたりするんですよね.
地中海式ダイエットの内容を簡単に確認すると,まず,積極的に食べるものとして,
- 野菜
- フルーツ
- ナッツ
- 種子
- 豆類
- 全粒穀物
- ハーブ
- 魚介類
- オリーブオイル
なんかがあって,逆に避けるべきものとして,
- 加工食品
- パン,パスタといった精製穀物
- マーガリン
みたいなのがあげられます.
ってことで新しいデータ(R)では,「地中海式ダイエットで認知症,アルツハイマーのリスクが下がるよ!」って内容になっていまして,またもやいい感じでした.
これはスペインとか地中海地域の人を対象にした調査でして,登録時点で30歳から70歳の健康な男女16,160人を平均21.6年追跡したものになっています.長期かつ大規模なサンプルデータになっていていい感じじゃないでしょうか.
で,調査では参加者の食事スタイルをチェックして,「どれくらい地中海式に近いものを食べているか?」ってとこを掘り下げています.具体的には,
- 野菜やフルーツをどのくらい食べているか?
- 魚や全粒粉をどのくらい食べているか?
- 加工食品や肉をどのくらい食べているか?
- アルコールをどのくらい飲んでいるか?
みたいに,上で挙げたような要素とかをチェックしたわけですね.んで,これが18点満点で採点されました.
でもって,この食事データと認知症やアルツハイマー等の発症状況を比べたところ,こんな感じのことがわかりました.
- 期間中,459人が認知症(うち67%がアルツハイマー型)を発症した.
- 地中海式レベルが高い人(11点以上)の人は,低い人(6点以下)に比べて,認知症のリスクが20%低かった.
- 地中海式レベルが2ポイント高いと,認知症のリスクが8%,アルツハイマー型認知症のリスクが6%低くなる傾向がみられた.
だったそう.20%というのは非常に大きな影響ではないでしょうか.また,2ポイント分食生活を改善するだけでも十分なリスクの減少が見込める結果になっていると思います.
さらに別の結果も並べておきますと,
- 女性の地中海式ポイントが2ポイント高いと,非アルツハイマー型の認知症のリスクが26%低かった.
- 男性の地中海式ポイントが2ポイント高いと,アルツハイマー型の認知症のリスクが12%低かった(HR 95%CI: 0.76-1.01).
- 認知症のサブタイプ,性差,教育レベルによって有意な差はみられなかった.
- また,主要な心血管系のリスク要素を調整してもなお相関がみられた.
みたいになっています.もちろんこのデータからは直接,「なんで地中海式で認知症のリスクが改善するの?」ってとこはわからないですが,やっぱり,地中海式ダイエットによる抗炎症作用,抗酸化作用,脂質低下作用が寄与しているんじゃないか?とチームもコメントしていて,いかにもありそうって感じですよね.
因果関係がはっきりしなくても,このデータを見る限り,食生活の改善でそれなりに認知症のリスクが低下するわけですね.いいですねぇ.
もっとも,過去の研究なんかを参照してみると,地中海式ダイエットと認知の低下,認知症のリスクの低下には相関がみられなかったというデータも複数あったりします.
例えば,アメリカで行われた大規模な調査(R)では,13,630人を対象にDASH食(地中海式に似たやつ)とかと,認知症の発症の関係を27年にわたって追跡していて,その結果,それらには優位な関係がみられなかった,という結論になっていたりします.
なんで,地中海地域の食事以外の他の生活習慣等が影響している可能性もあって,日本でも同じだけの効果がみられるとは限りません.
もっとも,地中海式で認知が改善!というデータももちろんあって,仮に認知症のリスクとは関係がなかったとしても,血管の健康とかいろんなポジティブな要素は十分期待できますし,健康的な食事をしとくに越したことはないですわな.
参考になれば幸いです.それではっ!
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