スマホのアプリゲームとか、ゲーム機のゲームとか、私たちはそのようなゲームに没頭し、時には一日の大半をゲームに費やしてしまうということさえあります。しかし、よく考えてみれば、ゲームの中では何度も失敗してゲームオーバーになったりしています。なのに、めげずに何度も何度も立ち上がります。課金までして再トライしたりすることすらあります。
一方で、現実世界ではどうか。現実世界では、一度障害にぶち当たったら、そもそも障害に立ち向かわない、または立ち向かったとしても、それを乗り越えられなかったらもうその障壁を上ることはせず、あきらめてしまう、ということが少なくないのではないでしょうか。
現実世界でも、もう一度、二度、挑戦すれば乗り越えられるかもしれないのに、挑戦しない。どうしてなのでしょうか。それをゲームの世界での人間の脳の中身を見てみることによって考えてみたいと思います。
フィンランドのアールト大学の研究等はその点について考えるヒントを与えてくれます。
アールト大学の研究では、参加者にシューティングゲームを実際にプレイしてもらうか、または事前にプレイした様子を録画した動画を見てもらいました。そしてその時の参加者の脳の状態をfMRIで測定しました。
その結果、自分でプレイしたグループだけ、勝っても負けても中脳や線条体の活動が抑えられており、勝っても負けても同様にドーパミンを放出していたことが確認されました。要するに、自分でプレイしていたグループでは、「負け」「失敗」を悪いものだとは評価しておらず、勝っても負けても同じように夢中になっていたということです。
この結果を受けて研究チームは、
私たちは、ゲームのサクセスに付随する報酬の獲得に対する線条体の反応がビデオゲームをプレイしようとするモチベーションに影響を与えていると考える。
といっていて、ゲームのプレイをしたときに線条体がどう働くかによって、私たちのモチベーションは変わってくるということです。
以上から、自分で状況をコントロールでき、またチャレンジできるという認識があれば、失敗してもその状況にドーパミンが同様に放出され、チャレンジをあきらめるどころか、次回はどうしたらもっとうまくできるようになるだろうかと考えるようになるわけです。
これを現実世界で活用しようとすれば、例えば、成功するかわからないチャレンジをする前に、自分がどこまでうまくできるかを予想するという方法が考えられます。これをすることによって、予想が当たり成功すれば、その喜びからドーパミンが放出され、予想が外れても今度はどこを修正して臨もうかと考えることによって、新たなヒントを得られたという感覚からさらにドーパミンを放出することができます。これは、ネガティブな感情に陥ったときにも同様に用いることによって、ポジティブなフィードバックを得ることができるでしょう。
このように、日常における障壁に対してもちょっと工夫をするだけで、まるでゲームの感覚でトライすることができるようになるかもしれません。ゲームの恩恵は、最近いろいろな場面で活用されているので、もう少し詳しく勉強してみようと思います。
参考になれば幸いです。それではまた。
References
- Jari Katsyri et al. 2013, "Just watching the game ain't enough: striatal fMRI reward responses to successes and failures in a video game during active and vicarious playing"
- Steven W. Cole et al. 2012, "Interactivity and Reward-Related Neural Activation during a Serious Videogame"