「SNSとかインターネットってどうなん?」って議論は現在進行形で活発に行われてまして,以前までは「メンタルに良くない!」「不幸が増す!」っていう主張のほうが主流だったのに対して,最近では「あんま関係ないんじゃない?」みたいな主張も結構支持を得てきていたりします.
実際最近のメタ分析(R)なんかを見てみても,「SNSの利用は幸福にほとんど関係がない!」っていう結論になっているんですよね.とはいえ研究の歴史は浅い分野なんで,結論はまだまだ先になりそうな感じ.
といったところで,マインツ大学などのチームが行った研究(R)は,「SNSやインターネット利用の長期的な影響」を調べてくれていて勉強になりました.これまではどうしてもスナップショット的な研究が多かったですからね.
これは,調査開始時点で18歳のドイツの若者4,338人に対して,9年間の追跡調査を行ったものとなっております.具体的に何をチェックしたかと言うと,
- 抑うつ症状のレベル
- 人生の満足度
- インターネットの利用時間
- SNSの利用時間
- TVの利用時間
といったところ.ついでに全員の現実世界での交友関係に対する満足度や自尊心レベルなんかも調べて,総合的な結論を出したんだそう.
さて,その結果わかった事実は非常にシンプルで,
- 他人と比較した場合でも,当人と比較した場合でも,SNSやインターネットの利用頻度は抑うつレベル,人生への満足度への影響はほぼゼロだった.
- テレビの視聴時間のが長さは人生への満足度の低下と相関していたが,抑うつレベルとの相関は見られなかった.もっとも,人生への満足度への影響も小さかった.
というわけで,SNSやインターネットの利用は若者の幸福に良くも悪くも影響していなかったんだそう.
さらに細かな点を申し上げますと,
- SNSやインターネットの利用時間の長さは,一定期間経過後でも抑うつ,人生の満足度に対する影響は見られなかった.
- 普段より利用時間が増減した場合でも抑うつ,人生の満足度への影響はなかった.
- 友人関係への満足度や自尊心を考慮してもこれらの結果は変わらなかった.
みたいな感じだったそう.少なくとも9年間の間にラグを置いて幸福度が下がる,ということもなかったらしく,SNSやインターネットって別に人生の満足度をほとんど左右しないのでは?って結論となっておりました.厳密にいえば,ちょっとだけ悪影響は出てるけど,そのダメージは超少ないみたい.
というわけで,この研究からは「やっぱりインターネットやSNSは幸福度に良くも悪くも問題ないのかも?」って印象を抱きました.
とはいえ,
- 影響が出ないための利用時間の上限があるのかも?
- 他の年代の人にも同様に当てはまるのか?
- 使うSNSの種類や使い方でも変わってくるんじゃないのか?
みたいな懸念もありまして,手放しに「SNSは全く問題ない!」とは言えないよなーって思いました.実際SNSとうつや不安等の関係を示したデータも少なくないですしね.
てなわけで,「SNSやインターネットのメンタルへの影響はあんまり気にしなくていいけど,ほどほどにね!」ぐらいの常識的な結論に落ち着くんじゃないでしょうか.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!