「コミュニケーションにおいて表情は大事!」「特にアイコンタクトは超大事!」ってのは子供でも知ってる基本中の基本.アイコンタクトに関しては過去には当ブログでも,
みたいな話を書きました.コミュニケーションにおける相手の視線の方向によって心理的,生理的に大きく影響が出ることが複数の研究で確認されていたりもするんですよね.
でもって新しいデータ(R)では,「ビデオ通話の相手の顔がアバターになっていたら生理的,精神的な反応はどう違うの?」みたいなポイントが調べられておりまして,おもしろかったです.
たしかに,リアルでコミュニケーションを取った場合には心身に反応が出るけど,写真や動画で人の顔を見ても特に影響はなかったみたいな報告もありますからじゃあアバターになってたらどうなの?ってのは気になります.最近ではLINE等のビデオ通話で顔をアバターにできたりするみたいですから,それによってコミュニケーションにどう影響が出るのかを知っておくのは悪くないでしょう.
これはタンペレ大学の論文で,16歳から53歳までの38人の男女を対象に,以下の2つの状況で人と向き合ってもらいました.
- 普通のビデオ通話の状況
- VRを装着して,アバターに扮した人と対峙(アバターになっている相手は当実験の別の参加者だと説明された)
これらのそれぞれの状況下で,相手が目を合わせてきたり,目をそらしたりしたときの参加者の心拍数,皮膚コンダクタンス(コミュニケーションによる生理的な反応)を測定し,その後,実験中の心理的な状況に関する質問に回答してもらいました.
その結果はというと,
- 目をそらされたときに比べて目を合わせられたときに,心拍数が高くなった(つまり注意力が高くなった).LIVEの状況とVRの状況で有意差はなかった.
- 皮膚コンダクタンス反応も目を合わせられたときのほうが大きかった(つまり生理的な興奮が高まった).もっともこれはLIVEの状況の時にのみ確認された.
- 主観的にはLIVEでもVRでも目を合わせれらたときに興奮が高まった感覚を体験し,LIVEのほうが相手との社会的なつながりを感じたと報告した.
だったそう.要するに,アバターとのコミュニケーションでは,生理的な興奮の度合いは下がるかもしれない,というわけですな.
研究チーム曰く,
これらの発見は,社会的な不安の改善,自閉症の子供に対するアイコンタクトの練習のためのセラピーとして,VRを使った介入が有用である可能性を示唆している.VRを用いた人とのかかわりは,生理的な興奮を抑制し,一部の患者は症状の改善に対して前向きになるかもしれない.
とのこと.人とのコミュニケーションに不安を感じがちの人だったり,いわゆる「コミュ障」の人でも,相手がアバターだったら生理的な過度の興奮を抑えられて,それを繰り返していけば,通常のコミュニケーションでも抵抗が少なくなるんじゃないか,ってことですな.
そんなわけで,アバターを使ってコミュニケーションをとるときなんかはそのメリット・デメリットを頭に置いておいていただくといいんじゃないでしょうか.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterなどでご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!
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