目標達成

人生諦めも肝心。というか夢は諦めたほうが人生幸せになるかもじゃん?ってメタ分析のお話

「人生時に諦めも肝心!」みたいなことはよく聞きますが、それでもやはり一度決めた目標には粘り強くしがみつくことこそ正義!みたいな価値観は今でも結構主流なわけです。

しかし、最近の心理学では、「夢も大事だけどそれに固執するのって結構コストがでかいよねー」と考えられているんですよ。というのも、達成できそうもない目標にいつまでもしがみついていたら別の道のチャンスを逃しちゃうし、何よりほかによりどころがないせいで心身ともにやられていっちゃいますからね。

「目標調整能力」って何?

そこで、ここ20~30年で注目されているのが「目標調整能力」であります。これはあらゆるレベル(仕事、人間関係、人生 etc.)で自分がいま設定している目標を再評価して、目標を今の自分に最も適した形に調整していく能力のことで、以下の2つの要素から構成されます。

  • ディスエンゲージメント能力:「今の目標は達成不可能だ、別の目標の方がよさそう」と思った時に、今の目標からきっぱり離脱する能力
  • リエンゲージメント能力:もっと自分に合っている目標を見定めてそれにコミットできる能力

この2つの能力が高い人ほど、無駄に高い目標に打ちのめされて反芻思考に陥った結果うつになったり、さらに免疫系にダメージが出て慢性的な身体へのダメージが出たりといった状況を回避できるんじゃないかと考えられてるんですよ。

確かに運の要素がでかすぎる目標よりも、自分の努力次第でそれなりに状況をコントロールできるっていう目標にさっさとシフトできた方が心身ともにQOLが高まりそうってのはイメージしやすいんじゃないでしょうかね。

目標調整能力が高いとどんなメリットがあるの?

ということでコンコルディア大学のメタ分析(R)では、「目標調整能力がそれぞれメンタルや身体にどこまでいい影響を与えてくれるのか?」ってことを複数の観点から調べてくれております。これは過去31件の研究で得られたデータを対象にしてまして、

  • ディスエンゲージメント能力(「目標のことを考えないことは自分にとって簡単だ」みたいな質問にどのくらい賛同するか)
  • リエンゲージメント能力(「目標にはいつも複数の選択肢があるものだと考えている」みたいな質問にどのくらい賛同するか)
  • 精神的なウェルビーイング(ネガティブ感情、ポジティブ感情、人生の目的感とか)
  • 肉体的な健康(自己申告+客観指標)
  • うつリスク

といったあたりの関係性を深堀りしております。分析に含まれた参加者の平均人数は234人で、平均年齢が38.09歳、68.2%が女性だったそうな。

ということで、分析の結果をだだーっと並べてみましょう。

  • 全体的に、ディスエンゲージメント能力(r=0.08)も、リエンゲージメント能力(r=0.19)もQOLと正に相関していた
  • リエンゲージメント能力は身体的な健康(r=0.09)よりも精神的なウェルビーイングと強く関連していた(r=0.20)。
    メンタル面に関しては、特にネガティブなポイントを緩和する効果が強かった(うつ:r=-0.09、不安:r=-0.12、侵入思考:r=-0.18、ストレス:r=-0.23、ネガティブ感情:r=-0.14、疲労感:r=-0.09)。
    肉体的な健康に関しては、症状の有無(r=-0.13)、慢性病(r=-0.09)、身体活動量(r=0.12)との間で関連が見られた。
  • ディスエンゲージメント能力もまた身体的な健康(r=0.04)よりも精神的なウェルビーイングとの関連が強かった(r=0.08)。
    が、ネガティブな要素を軽減すると同時に、ポジティブなポイントをブーストする効果も強かった(人生への満足度:r=0.27、人生の目的:r=0.29、ポジティブ感情:r=0.26、うつ:r=-0.20、不安:r=-0.14、ストレス:r=-0.24、ネガティブ感情:r=-0.13、疲労感:r=-0.11)。
    身体的な健康に関しては、症状の有無(r=-0.13)、睡眠の向上(r=0.11)との間で関連が見られた。
  • うつリスクの度合いによらず、ディスエンゲージメント能力、リエンゲージメント能力ともにうつ症状の低減と関連していた
  • 特に、これらの関係は年齢が高い人ほど顕著だった

みたいになります。目標から離脱する能力も、別の目標を追求する能力も、それぞれ独立して精神的・肉体的なメリットをもたらしてくれるわけっすね。

まとめ

まあこの数字だけ見るとそこまで人生に大きな影響をもたらさない気もしますが、個人的な感想としては、

  • 時間的なラグが生じることを考慮すると、目標調整能力って思ってる以上に人生の質を左右するんじゃないですか?

くらいには思いました。目標から離脱できないとじわじわと目標に圧倒され、時間をかけてメンタル、ひいては肉体もむしばまれちゃうし、さらに新しい目標にうまくスイッチできないと人生も目的や満足感を得られる確率が結構下がっちゃいそうですからねー。

この研究だけ見ると身体的な面との関係はデータが少ないんで特にこの点の判断には注意が必要なものの、ストレスや反芻といった思考が睡眠に悪影響をもたらしたり慢性痛を誘発したり、運動量が減っちゃったりといった効果は多く確認されているんで、メンタルだけでなく肉体の健康を守るためにも目標調整能力って大事そうだよなーとか思いましたね。

参考になれば幸いです。それではまたっ!

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