「大気汚染が健康にもメンタルにも美容にも悪い!」ってのは何度もしている話。これは世間でも広く認識されていて、「決して大気汚染物質の基準を超えてはならないのだ!」なんて言われるわけですが、
- そもそも、基準より低ければ大気汚染物質って健康に影響ないの?
みたいな問題を調べた研究(R)が出ておりました。
もちろん大気中の汚染レベルが低いに越したことはないにしても、基準以下ならそれなりに安心してもいいのか?ってのは気になるところっすよね。
大気汚染って基準より低ければ本当に大丈夫なのか?問題
そんなところで研究チームは、特に「基準より低いレベルの大気汚染」と死亡率との関係について、6つの国を含む8つのコホートデータを用いて調べております。
ここでいう「大気汚染の基準」ってのは、EU、WHO、EPA(米国環境保護庁)の定めているガイドラインのこと。また、関係が調べられた大気汚染物質には、PM2.5、二酸化窒素、オゾン、ブラックカーボンが含まれたそう。どれも大気汚染物質の王道っすね。
研究では、対象者325,367人を平均19.5年追跡して、大気汚染のレベルと死亡率との関係を比較、さらに、年齢、喫煙習慣やBMI、収入といった関係がありそうな要素を調整したんだそう。
これまでも、低濃度の大気汚染でも健康に害が出る!みたいなデータはあったんですが、ここまで大規模かつ緻密な分析をしたデータは見たことがなかったんで、非常に参考になりそうであります。
基準以下でも決して安心できない
調査期間中はに、47,131人(14.5%)が死亡したそうで、どんなことがわかったかと言いますと、
- 全体的に見て、PM2.5、二酸化窒素、ブラックカーボンは総死亡リスクの上昇と相関していた。死亡要因別では、心血管系、呼吸器系でも同様の傾向がみられ、糖尿病による死亡との間での相関が最も強かった
- オゾンレベルの上昇は、死亡率との関係で負の相関がみられ、また、オゾンと他の大気汚染物質との間にも負の相関がみられた(つまり、オゾンが多いと他の大気汚染物質は少なかった)
- 各基準値よりも低いレベルであっても、同様の傾向が確認され、むしろ基準値以下のほうが、大気汚染物質濃度の上昇による死亡リスクの上昇は大きい傾向があった。また、各大気汚染物質による影響はそれぞれ独立して確認された
- 具体的なデータとしては(年齢、喫煙習慣、BMI等は調整済み)、
- PM2.5:全体としては、5μg/m3増えるごとに自然死のリスクが13%、心血管系のリスクが13.5%増えていたのに対して、汚染レベルが12μg/m3に限った場合には、5μg/m3増えると自然死のリスクが29.6%、心血管系による死亡リスクが23.8%上昇した
- NO2:全体としては、10μg/m3増えるごとに、自然死のリスクが8.6%、心血管系の死亡リスクが8.9%だったのに対して、汚染レベルが20μg/m3以下に限った場合には、10μg/m3増えるごとに、自然死のリスクが9.9%、心血管系の死亡リスクが17.1%上昇していた
- ブラックカーボン:全体としては、0.5×10^(-5)/m増えるごとに、自然死のリスクが8.1%、心血管系の死亡リスクが8.5%、呼吸器系の死亡リスクが8.4%増えていたのに対して、汚染レベルが1.5×10^(-5)/m以下に限った場合には、0.5×10^(-5)/m増えるごとに、自然死のリスクが12.5%、心血管系の死亡リスクが15.0%、呼吸器系の死亡リスクが12.7%上昇していた
- PM2.5:全体としては、5μg/m3増えるごとに自然死のリスクが13%、心血管系のリスクが13.5%増えていたのに対して、汚染レベルが12μg/m3に限った場合には、5μg/m3増えると自然死のリスクが29.6%、心血管系による死亡リスクが23.8%上昇した
- これらの傾向は、教育レベル、食習慣、仕事上のステータス等を調整してもなお確認された
といった感じ。全体的に見ると、特にPM2.5、NO2、ブラックカーボンについては、基準以下であったとしても、汚染レベルが上がると十分健康に害があるのだ!って感じですね。
今後はどうなる?どうすればいい?
ちなみに、現段階(2021年9月4日)における基準値は、
- EU:PM2.5が25μg/m3以下、二酸化窒素が40μg/m3以下
- EPA:PM2.5が12μg/m3以下
- WHO:PM2.5が10μg/m3以下、二酸化窒素が40μg/m3以下
みたいな感じになっておりまして、今回の結果を踏まえると、この基準だと甘々なんじゃないの?とか思ってしまいますな。
研究チームも、
我々の研究は、たとえ現段階のヨーロッパ、北アメリカの基準、WHOのガイドラインより低いレベルであっても、屋外の大気汚染は死亡率の上昇に関係しているというエビデンスを提示している。
したがって、これらの発見は、大気の質に関する制限、ガイドライン、基準の改定に関する議論や、GBD(世界の疾病負荷)による今後の評価に重要な示唆をもたらすものだ。
とのこと。近年の先進国では大気の状態は改善してきているとはいえ、まだまだ満足できる数字ではないというわけですな。
とはいえ、我々個人としては国や企業等によって大気の状態が改善されるまで何もしないというわけにもいきませんので、引き続き大気汚染対策の用のマスクとかは必須だよなーとか思いました。
参考になれば幸いです。質問やコメントなどありましたらTwitterやコメント欄などでご連絡いただけると嬉しいです。
それではっ!