「大気汚染がいろんな面でよくない!」ってのは当ブログでもたびたび紹介しているテーマでして、大気汚染と言ったら王道の肺がんや呼吸器系の疾患、心臓の問題のほか、
みたいな話をしたことがありました。
まだまだはっきりわかっていないことは多いものの、大気汚染が我々のいろんな面で影響を及ぼしている可能性は大きいっていうわけなんですよね。
で、新しく出てた研究(R)では、今度は「大気汚染で労働生産性が下がる!」って話になっておりました。
大気汚染で仕事の生産性ががっつり下がっちゃうかもよ!
これは、浙江大学などの研究で、シェンチェンにある囚人の労働施設におけるデータから、過去10年以上のデータを集めて、大気汚染と労働生産性を比べたもの。
ちなみに、大気汚染と労働生産性の関係を調べようという試みは以前からあったんですが、
- 客観的な労働時間、賃金を正確にはかれない
- 大気汚染自体が労働生産性に影響しているのかわからない。つまり、「なんか空気が汚いから今日は屋内で作業をしよう」「今日はスモッグが濃いからやる気がしないな」みたいに、個人の意思決定の要素が強い
みたいな問題があって、十分に調べられなかったんですよ。
それを、今回の研究では囚人の労働施設を対象にすることでそこら辺の問題をまるっと解決できて最適だったというわけ。そこなら原則毎日、一日中働かないといけないし、個人で仕事を選択することもできませんからね。
しかも、この研究はシェンチェンが対象になってるんで、より大気汚染が深刻な地域における影響を調べられたというのも参考になるポイントでありましょう。
で、この研究では大気汚染の指標としてAPI(AQI)ってのが用いられておりまして、これには、
- PM2.5
- PM10
- 二酸化硫黄
- 二酸化窒素
- オゾン
- 一酸化炭素
が含まれます。で、このAPIと出来高の賃金(労働生産性)と比べてみたというわけ。
大気汚染でどのくらい生産性が下がるか?
それで何がわかったかと言えば、
- 大気汚染がひどくなるほど労働生産性は低下していた。具体的には、APIが10ユニット高くなるごとに月額の賃金が平均4%低下していた
- 特にその影響は、中年の人よりも18~20歳の人、50歳以上の人に顕著に確認された
- 同様に、教育レベルが低い人よりも高い人のほうが顕著に生産性が低下していた(高い教育を受けた人ほど大気汚染の悪影響に敏感であるからと考えられる)
- また、物流やマネジメントの仕事をしている人よりも、製造の仕事をしている人のほうが生産性の低下の度合いが大きかった(外での仕事が多い)
- APIと労働生産性の関係は非線形で、大気汚染がひどくなると労働生産性の低下は一層著しくなった
だったそうな。
最後のポイントに関しては、APIが100を超えた日には、100以下の日に比べて労働生産性に与える影響は4倍にも上ったとのこと。高い労働生産性を維持するには、まずは極度の大気汚染にさらされる時間を減らすことが必要かもしれないということがわかりますな。
まとめ
研究チーム曰く、
我々の発見は、長い時間大気汚染への曝露を強いられる労働集約的な仕事に従事する人へのダメージに対してある程度一般化できる。
この示唆は、製造業労働者における労働環境の改善という面で政策決定者の注意を引くものかもしれない。
とのこと。大気汚染によって生産性が低下する職種に対して改善策を講じれば、結局トータルで見れば経済的にもメリットが見込めるかも、と。
そんなわけで、主に屋外での仕事が多い人なんかはお気を付けくださいませ。
参考になれば幸いです。質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです。
それではっ!
【参考動画】