「睡眠が大事!」ってのは超当たり前。睡眠は、よく言われる記憶力だけでなく、心臓の問題から抑うつ、アルツハイマーなど、多岐にわたる影響をもたらすことがわかっているわけです。
で、今度は「睡眠不足が続くとネガティブになるぞ!」みたいなデータ(R)が出ていたんでメモ。
睡眠不足で感情がネガティブになっちゃうんじゃない?
これはラクイラ大学の研究で、42人の健康な男女を対象にしたクロスオーバー試験になっております。対象者は平均年齢は24.09歳、普段の睡眠時間は7~9時間の人たちを集めたとのこと。
まず、参加者をランダムに以下の2つのグループに分けました。(ウォッシュアウト期間は2日間)
- 5日間いつも通り寝てもらう
- 5日間連続で、睡眠時間を5時間以下にしてもらう
そしてそれぞれ5日間が終わった翌日の6日目に、以下のようなテストを行いました。
- 気分がよくなる写真、ニュートラルな写真、不快な写真をそれぞれ30枚ずつ見せる
- 各写真を見たときの感情(ハッピーかアンハッピーか)、感情の起伏の度合い(落ち着いているか興奮しているか)
こんな感じで、睡眠時間を制限することで写真を見たときの感情の反応性になんか違いが出るのか?ってのを調べたわけ。
この手の研究は、一晩の睡眠不足とか、数か月単位の慢性的な睡眠不足の人を対象にして行われたことはあったんですが、数日連続したときにどうなるのか?ってのは意外と調べられてなかったんですよね。
「最近ちょっと忙しくて数日寝不足」みたいなことはありがちなんで、結構現実感のある話なんじゃないかと。
睡眠不足がネガティブなバイアスをかける
それで、どんなことがわかったかと言いますと、
- 睡眠不足だった人は、そうでない人に比べて、ポジティブな写真やニュートラルな写真を見たときに、よりネガティブな感情を抱く傾向があった
- この傾向は、その時の気分を調整してもなお確認された
- 一方、ネガティブな写真を見たときには有意な違いはなかった
- また、感情の起伏のレベルにも有意差は見られなかった
って結果だったそう。
「気分」ってのは、テストの前に測定された、「ウキウキしているか」「不安感はあるか」「緊張しているか」「イライラしているか」「活力を感じているか」みたいな要素。
このような、その時のメンタルの状態は、結果に直接影響してなかったってこと。
まとめ
ってことで簡単に言えば、「睡眠不足が数日続くと、いつもならポジティブまたはニュートラルに見えていたものがネガティブに見えてしまう!(のかも)」って話でして、何とも嫌な感じ。
気分のファクターによらずこのような傾向が確認されたってことで、「睡眠不足が続いてイライラする」みたいなことが決定的な要素ではないというわけですが、この点について研究チームは、
ネガティブな刺激に対する評価に何の影響もないのは、このような刺激の本質的な強さと重要性に起因するものと考えられる。
(中略)
今回の結果は、ネガティブな写真はポジティブな写真よりも注意を引くものであり、睡眠不足の被験者においても安定した主観的評価を導くと考えたPicherらの解釈と一致する。
この見解によれば、情動反応性に対する睡眠不足の効果には、自動化された注意プロセスと、自己調整プロセスが関与している可能性がある。
とのこと。ちょっと何言ってるかわかりづらいかもしれないですが、要するに、ネガティブな対象は、ポジティブな対象よりも人類が進化する過程で重要だったものであって、多少の睡眠不足とかでうまく頭が働かなくても、安定して反応できるようになってるんだ、ってこと。
ちょっと前までの人類にとっては、目の前の木に果実がなっていることよりも、草の陰からこちらを狙っているライオンに注意を向けることのほうが断然重要でしたからねー。
「そもそも睡眠不足でなんで感情の処理プロセスに影響が出るのか?」って点に関しては、
- 睡眠が不足すると偏桃体と前帯状皮質の接続に変化が生じる
って報告があるんで、そこら辺が関係していそうであります。
てなわけで、研究チームの言葉を借りてまとめると、
十分な睡眠をとることは、適切な感情の反応性を維持するために必要不可欠だ。
睡眠不足が蔓延する現代社会においては、今回の結果は、臨床的な文脈だけでなく、個人の日常生活においても重要な示唆をもたらしている。
ってことで、人生を幸せに生きるためにも、睡眠不足にも気を付けよう―と改めて思いましたね。
参考になれば幸いです。質問やコメントなどありましたらTwitterやコメント欄などでご連絡いただけると嬉しいです。
それではっ!
【参考動画】