運動と睡眠
「健康のためには運動が大事!」,「睡眠も大事!」っていうのは常識なわけですが,新たな研究(R)では,
- 睡眠不足によるダメージは運動である程度軽減できるんじゃない?
っていうありがたい結論になっておりました.
睡眠や運動単体の研究なら過去にも大量に行われておりまして,分析の際に他方の要素も調整することは多いんですが,「睡眠と運動の組合せ」についてがっつり調べたデータって意外と少なかったんですよね.そんなわけでこの研究は非常に参考になりました.
では早速研究の内容を見ていきましょうー.
38万人を11年間追跡
これは,シドニー大学などの研究で,イギリスのバイオバンクのデータから,38,055人の男女を平均11.1年間追跡したもの.対象者の平均年齢は55.9(±8.1)歳で,女性が55%.
調査では,参加者の運動のレベルを4段階,睡眠の質を3段階に分類,合計12のグループに分けて,それぞれの総死亡リスク,要因別の死亡リスクを調べたんだそう.
それで,どんなことがわかったのかと言いますと,
- 運動レベルを含む諸要素を調整した結果,睡眠の質が低い人は,質が高い人に比べて,総死亡リスクが23%高く,心血管疾患による死亡リスクが38%高かった.中でも脳卒中による死亡リスクは94%高かった
- 睡眠の質を含む諸要素を調整した結果,運動レベルが低い人は,高い人に比べて,総死亡リスクが25%,心血管疾患による死亡リスクが31%,トータルのがんによる死亡リスクが16%,肺がんによる死亡リスクが35%,CHDによる死亡リスクが35%,脳卒中による死亡リスクが38%高かった
- 睡眠の質,運動レベルがともに低い人は,両方が高い人に比べて,
- 総死亡リスクが57%高かった
- CVDによる死亡リスクが67%高かった
- トータルのがんによる死亡リスクが45%高かった
- 肺がんによる死亡リスクが91%高かった
- CHDによる死亡リスクが59%高かった
- 脳卒中による死亡リスクが196%高かった
って感じで,運動不足と睡眠不足が重なることで明らかに死亡リスクが高くなっていることが見て取れます.逆に言うと,同じ「睡眠不足」「運動不足」とされる人でも,他方のレベルがどのくらいかによって体への影響が全く違ってくる可能性があるってことっすね.
で,睡眠不足の人が死亡リスクをチャラにするためにはどのくらい運動すればいいのか?ってことが気になりますが,この点について研究チームは,
現在の運動のガイドライン(600MET-min/week)を満たしていれば,睡眠不足による死亡リスクへの影響の大半を相殺できる.
とのこと.600METっていうのは現在のWHOの定める運動のガイドラインの下限の数値で,ウォーキングでいえば2.5時間くらい,ランニングでいえば1時間15分といったところ.
1日20分のウォーキングで睡眠不足の弊害をカバーできると考えると結構うれしいですな.
まとめ
そんなわけで,「睡眠不足と運動不足は互いにカバーできそう!」って感じの結論.まあ当然運動も睡眠も両方良好な状態をキープするのがベストなわけですが,特に睡眠の問題の改善なんかは一朝一夕にはいかなかったりするんで,ゆっくり睡眠の問題に向き合いつつ,短期的にはとりあえず運動のほうを見直してみるのもいいかもしれませんね.運動によって睡眠にもいい影響が出るってこともあるでしょうし.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!