心臓と血管は超大事だよね!
「心血管系が超大事!」っていうの当ブログでもたびたび取り上げておりまして,もはや言うまでもないところ.
例えば,心血管系の健康は,体重とか肥満よりも早期死亡率と相関していたりしまして,気にせずにはいられないんですよね.
そんな中で,新しい研究(R)では,「心不全の人はがんリスクも大きく上がっちゃうかもよ!」みたいな結論になっていてちょっとビビりました.
20万人以上を10年以上追跡!
これは,IQVIAっていうデータベースをもとにしたドイツのコホート研究で,分析に含まれた対象者はこんな感じ.
- 100,124人が心不全にはじめて罹患した人で,100,124人が心不全を抱えていない人
- 平均年齢は72.6歳で,標準偏差は12.2歳
- 54.0%が女性
- 両グループで,肥満や糖尿病の割合に有意差はなし
そして,心不全にかかっているか否かで分けた両郡において,どのくらいがんと診断されたかを10年以上追跡したんだそう.
これまでの研究でも,「心不全の人はがんにかかりやすいかも?」みたいなことは言われていたんですが,どうしても対象者が少数だったのと,腫瘍のタイプが特定のものに限られていたんですよね.なんで,ここまで大規模な疫学的なデータは初めてで,非常に参考になりました.
心不全でがんリスクが爆上がり?!
それで,まずは大雑把な結果を確認してみると,
- 10年間の観察期間のうち,心不全を抱える人は25.7%ががんと診断されたのに対して,心不全を抱えていない人は16.2%ががんと診断された
- 男女別にみると,その割合は,女性では28.6% vs 18.8%,男性では23.2% vs 13.8%だった
といった感じ.これは,心不全ががんを発症する何らかの原因となっている可能性を指摘するには十分な数字になっているんじゃないでしょうか.
さらに,相対的なリスクという面から見てみると,
- 心不全の人はそうでない人より,全体的ながんのリスクが76%高かった(女性は85%,男性は69%)
- 部位別では,
- 口腔がんのリスクは110%高かった
- 肺がんのリスクは91%高かった
- 女性生殖器のがんリスクは86%高かった
- 皮膚がんのリスクは83%高かった
- リンパ組織,造血組織のがんリスクは77%高かった
- 消化管のがんリスクは75%高かった
- 乳がんのリスクは67%高かった
- 膀胱がんのリスクは64%高かった
- 男性生殖器のがんリスクは52%高かった
みたいになっていて,心不全を抱えているとがんと診断される確率が明らかに高くなっていることがわかります.もちろん,糖尿病や肥満,年齢,通院頻度等も考慮された結果です.
当然ながら,このデータだけでは因果関係を示すことはできませんが,研究チームは,
- 心不全で炎症を引き起こすたんぱく質を生成され,それが腫瘍につながっているのかも?
といった仮説を指摘しておりました.
また,この研究では体重とかは考慮されていても,喫煙習慣やアルコール消費量,日常的な活動量等は調整されておりませんので,ここら辺を考慮すると結果はそれなりに変わってくる可能性がある点には注意が必要でしょう.
まとめ
研究チーム曰く,
将来,この研究が心不全患者の治療や予後の役に立つかもしれない.例えば,特に心不全患者に絞った腫瘍のスクリーニングを強化することが考えられる.
とのこと.心臓や血管に問題があると,その他の部位にも同時に問題を抱えているケースは多いけれど,それはがんも例外じゃないかも,ってわけですな.
そんなわけでまとめると,
- 心臓に心配がある人はがんについても気を配った方がいいかも
- 今のところ特に問題ない人は,まずは心臓の健康を意識しとくとがんの予防にもつながるかも
といったところでしょうか.私も,改めて心血管系を意識した食事や運動を心がけようーと思いました.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!