「子供の学力は親の収入レベルによって左右されるのだ!」みたいな話はよく聞くところ.もちろんそれですべてが決まってしまうわけではないものの,ある程度親の収入や社会的・経済的なステータスによって子供の学力や学業成績が影響を受けていることは多くの研究で確認されているんですよね.
最近では,子供の脳をチェックしてみたら,「社会経済的ステータスの高い環境で育った子供のほうが最終的に脳の表面積が大きく,大脳皮質が厚くなっていた!(R)」みたいなことも確認されていたりします.
一方,兄弟が多かったりとかして決して裕福な家庭ではないはずなのに,優秀な成績を残す子供がいるのも事実.
そんなところで,「子供の学力に対する親のステータスの影響を覆す要素はこれだ!」みたいな研究(R)が参考になります.
この研究では,中国の11の中学校に通う中学2年生の中から2294人を集めて,以下のようなポイントをチェックしました.
- 親の社会経済的ステータス(親の収入や資産,教育レベル,職種,役職など)
- 生徒の読解力
- 親と子供の関係性
- 生徒の学習に対するモチベーション
「親と子供の関係性」っていうのは,「僕は両親のことを誇りに思う」「私が困ったときには両親はきっと手を貸してくれる」みたいな質問に子供たちがどのくらい賛同するか,って感じで調べられました.
つまり,「子供の読解力に対する親のステータスの影響の大きさは,親子の関係性や子供のモチベーションによって変わってくるんじゃないの?」って考えたわけっすね.
さて,それでどんな結果が出たのかと言いますと,
- 親の社会経済的ステータスと子供の読解力には有意な関係がみられた.つまり,親の収入や教育レベル,職業上の地位が高いほど子供の読解力が高く,その逆もしかりだった.
- もっとも,この関係は,親子の関係性や子供の学習のモチベーションのレベルが高いほど弱まっていた.
だったそう.特にモチベーションの影響は大きくて,子供の読解力に対する親のステータスの効果量は,学習のモチベーションが低い子供では0.40だったのに対して,モチベーションが高い子供では0.24まで下がっていたらしい.結構大きい数字なんじゃないでしょうか.
研究者曰く,
学習に対するモチベーションは,社会経済的ステータスの低さに起因する逆境を乗り越える力を与えてくれる.社会経済的ステータスの高い子供においては,たとえ学習のためのリソースやサポートは豊富かもしれないが,学習のモチベーションが低ければ,学業上の失敗に直面してしまうかもしれない.
とのこと.裕福な家庭の子供のほうが学習のモチベーションが低い,という傾向は以前から確認されていたりするんで,そこのところは気を付けておいた方がいいかもっすね.
さらに,
親の教育レベルや職業,収入は短期間で変えることはできないが,教育への態度や親子の関係性は比較的簡単に変えることができる.親は,よりよい家庭の空気を構築することによって子供の勉強に対してサポート,アシストするべきなのだ.
ともコメントしております.参考書を買ってあげたり,いい塾に入れてあげたりとか,金銭的な援助だけでなく,勉強の重要性を説いたり,シンプルに頼りがいのある親になることで,子供の知性を伸ばしてあげることができるんだ,と.
子供の成長は長期スパンですから,そこら辺をちゃんと意識してあげれば,収入を増やしたりするよりもむしろ子供のためになるのかもしれないっすね.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!