ご存じの通り,「クロノタイプ」っていうのは,簡単に言えば「個人が一日の中でどの時間帯に一番活力があるか」みたいなことです.
遺伝子によってタイプが異なるので,自分のクロノタイプにあった生活スタイルをとることで,最大のパフォーマンスを発揮できるようになる,というわけですな.
クロノタイプにはいくつか分け方がありますが,王道なのは以下の4つに分類する方法でしょう.
クマ型(朝型)
- 人口の50%程度
- 7時間以上の睡眠時間が必要
- オープンで開放的な性格
- 朝から昼にかけて最大のパフォーマンスを発揮する
- 7時起床24時就寝くらいがベスト
ライオン型(昼型)
- 人口の15~20%程度
- 7時間程度の睡眠が必要
- 楽観的,現実的な性格
- 昼頃に最大のパフォーマンスを発揮する
- 5時半起床22時半就寝くらいがベスト
オオカミ型(夜型)
- 人口の15~20%程度
- 7時間程度の睡眠が必要
- 気分屋,感情的な性格
- 夜更かしが得意で,一日の後半に活動のピーク
- 7時起床24時就寝くらいがベスト
イルカ型(超夜型)
- 人口の10%程度
- 6時間程度の睡眠が必要
- 神経質,注意深い性格
- オオカミ型よりもさらに深い夜が得意
- 6時半起床23時半就寝くらいがベスト
といった感じで,できる限りクロノタイプにあった生活を心がけたいものです.
ところで,この「クロノタイプが悪夢を見る頻度と関係があるんじゃない?」みたいなことが主張されていたりするんですよ.
で,ドイツで行われた研究(R)では,「クロノタイプや性格,住んでいる地域によって悪夢を見る頻度が変わるか?」みたいなポイントが調べられておりました.
悪夢ってひどくなると気分障害とかにつながって日中の活動に支障をきたしたり,ベッドに入るのが怖くなったりして,ときに深刻な問題につながったりするんですよね.
他の研究なんかを見てみると,神経症傾向の高い人のほうが悪夢を見やすいということが報告されております.そして朝型よりも夜型の人,田舎よりも都会に住んでいる人のほうが神経症傾向が高いといわれておりまして,じゃあ夜型,都会に住む人のほうが悪夢を見やすいんじゃないか?って考えたわけですな.
というわけで,実験のデザインを確認すると,2492人の男女(47.75±14.41歳)を対象にオンラインで以下のポイントに回答してもらいました.
- 夢を見る頻度
- 悪夢を見る頻度
- 悪夢にどのくらい苦しめられるか
- ビッグファイブ
- クロノタイプ
- 住んでいる地域
これによって,それぞれが夢や悪夢とどのくらい相関があるかを調べたわけっすね.
それでどんな傾向がみられたかと言いますと,
- 悪夢を見る頻度は,神経症傾向の高さ,開放性の高さと正の相関があり,教育レベル,誠実性の高さと負の相関があった.
- 朝型のほうが夢を思い出す傾向が大きかった.
- 夜型のほうが悪夢を見る頻度が高かったが,年齢や性別等を調整すれば有意な関係はなかった.
- 都会か否かは悪夢を見る頻度とは相関がなかったが,都会に住んでいる人のほうが悪夢による苦悩が”小さい”傾向がみられた.
みたいな感じだったそう.夜型だから悪夢が多い!みたいな直接的な関係はなくて,いろんな要因が絡んでいるのかも?ってことですな.
研究チーム曰く,
要約すると,クロノタイプや都会性は悪夢や夢の想起と関係しているかもしれないが,これまでの研究報告は錯綜している.
とのこと.これまでの研究結果を見ても,「関係あった!」「関係なかった!」みたいに両方向の報告があって,ここら辺の分野ははっきりしない面が大きいんですよね.特に聞き取りの形で実施した場合には夢を見たけど覚えていない,みたいなことが往々にしてあったりしますんで難しいんですよね.
まあ個人的には悪夢は神経症傾向を含め認知の面の影響が大きいのかなーとか思ってまして,悪い夢を見てもあまり深刻に考えすぎないのがいいんだろうなーって印象です(それが難しいわけですが).
「悪夢を見るほど現実の偏桃体の恐怖反応が減った!」みたいな報告もあったりしますんで,悪夢に悩みがちな方は,「悪夢で現実の感情のコントロールの訓練をしているんだ!」みたいに意識してみるのもいいかもしれません.クロノタイプとか性格を変えるのは難しいですしね.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやお問い合わせのページからご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!