「睡眠時間は超大事!」っていうのは常識で,睡眠に関する研究も無数にあるわけです.
個人的にも「睡眠時間は気を付けないとなー」ってことは常々思っているんですが,新しい中国の研究(R)では,「睡眠時間は慢性痛,メンタルヘルスとどのくらい関係があるか?」って点を社会人口学的な要素も含めて調べてくれていて参考になりました.
これは中国の広東省の人々を対象にして行われた調査なんですが,まずは研究チームの問題意識を見てみると,
ここ30年間で,中国は急速な社会経済的な変化,ライフスタイルの変化を経験してきた.それに伴って,喫煙やアルコールの摂取,高カロリー食の増加,身体活動の不足,電子的スクリーンへの曝露,慢性病やメンタル疾患の増加などのたくさんの公衆衛生上の問題が生じた.
これらの変化や問題すべてが睡眠時間に重大な影響を及ぼしているかもしれない.
とのことで,急激なライフスタイルの変化に伴う,いろんな要素によって睡眠時間に影響が出ているんじゃない?ってなわけで,当研究では参加者の収入や教育レベル,喫煙や飲酒といった要素との関連性も調べられたわけです.
日本でも,テクノロジーの発達だけでなく,経済の衰退などの点を考慮すると,これからライフスタイルの変化は(悪い方向に?)加速していく可能性もありますから,そういった意味でこのデータは参考になるかもしれません.
で,調査の結果何がわかったかと言いますと,
- 参加者は18歳から85歳までの13,768人.
- 参加者の平均睡眠時間は6.75時間だった.
- 睡眠時間が7時間未満の人は以下の慢性痛のリスクが高かった.
- 貧血症
- 痛風
- 脂質異常症
- 腰痛
- 抑うつ
- 睡眠時間が9時間以上の人は,悪性腫瘍のリスクが高かった.
- 睡眠時間が7時間未満の人は,収入レベルが低く,飲酒,喫煙の習慣があり,太りすぎの傾向がみられた.
- 教育レベルと睡眠時間との間に相関は見られなかった.
といった感じ.
もちろんこれは横断研究なんで,はっきりした因果関係はわかりませんが,飲酒や喫煙,体重管理といった要素の改善を意識することで睡眠の改善も期待できるかもしれません.
逆に,適切な睡眠をとることで収入もアップするかもしれませんね.実際,慢性的な不眠の状態だと,脳内の有害なタンパク質のレベルが上昇して「10年近く脳を老化させる!(R)」といった報告もありますから,集中力や創造性等が向上する結果として仕事のパフォーマンスも向上する,というのは十分考えられましょう.
というわけで,年齢や個人によって最適な睡眠時間には差があるでしょうし,生活の在り方も日々変化するでしょうが,とりあえずどんな年齢でも「1日7~9時間の睡眠」が身体やメンタルだけでなく,生活の質も向上させてくれそうなんで,そこのところは意識していただくといいんじゃないでしょうか.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやコメント欄などでご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!