アルコールの飲みすぎが血管に悪いのは当たり前でありまして,近頃は「アルコールは一滴だけでも悪影響がある!」みたいなデータも増えてきています.
もっとも,アルコールの摂取量を抑えれば血圧は下がるのか?ってポイントについては意外と知られていなかったりするんですよね.
てことで,カナダのCAMHなどの研究(R)では,「禁酒をすれば血圧は下がるの?」って点について調べてくれております.
これは,過去に行われた研究のうち質が高めな36件のデータから2,865人分を精査したメタ分析になっております.
まずは実験のデザインを簡単に確認しておきますと,
- 参加者のうち男性が2,464人,女性が401人.
- 平均年齢は49.5歳,平均BMIは27.1kg/m2,
- 13件の研究が高血圧の人を対象にしたもの.
- 実験期間は1週間から2年(中央値は4週間)
といった感じ.これらのデータから,「アルコールを控えれば血圧はどのくらい下がるのか?」ってポイントが,日常的な飲酒量別に調べられました.
それで何がわかったかというと,
- 一日に2杯以下の酒しか飲まない人は,禁酒をしても血圧の変化との関係で有意な相関は見られなかった.
- 一日に3杯以上の酒を飲む人が飲酒量を減らした場合には,血圧の有意な低下がみられた.
- もっとも血圧の低下がみられたのは,一日6杯以上の酒を飲む人がその飲酒量を約50%減らした場合で,SBPが5.50mmHg, DBPが3.97mmHgだけ低下していた.
だったそうな.ここでは「1杯」の定義は12gの純アルコールが入った飲料とされておりまして,5%のビール500mlで純アルコール20gなんで中瓶1本を飲んだらここでいう「2杯」には少し満たないくらい,という感じでしょうか.
研究チーム曰く,
一日2杯以上の飲酒をしている人を見分け,効果的な介入を行えば,アルコールと,血圧上昇による疾病負荷を十分に減らすことができるだろう.
とのこと.ちなみにイギリスではこれができれば年間7,000人の入院患者と678人の心血管疾患による死亡を減らせると予測されているらしい.結構すごいっすねー.
ていうことで,血圧が気になる方はとりあえず「お酒は一日2杯まで!」と決めていただくのがいいんじゃないでしょうか.
もっとも,日本人を対象にした研究なんかを見てみると,ほんの少しのアルコールでもがんリスクが高まる!とかいうデータも出ているんで,個人的には2杯と言わず原則ゼロを目指してもいいんじゃないかなーとかも思う次第です.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterやコメント欄などでご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!
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