「睡眠不足はよくない!」とはよく言われますが,「日々の睡眠のリズムを整えるべし!」,ってのは意外と見落とされがちなポイント.「明日は休みだから夜更かしして昼に起きよう」とか,逆に「明日は早いから早く寝て早く起きよう」みたいに,睡眠習慣って意外と簡単にぐちゃぐちゃになっちゃうんですよね.
で,新しい研究(R)では,「睡眠時間の長さよりも睡眠時間の規則正しさのほうが血管の健康のためには大事なんじゃない?」みたいなことが示唆されていました.
これはデラウェア大学の研究で,健康な大学生の男女51人を対象にして,14日間,睡眠と血管の状態を追跡しました.血管の状態ってのは,FMD(大血管の機能)と,PLM(微小血管の機能)の観点から調べられたそう.
その結果は,
- 参加者の平均睡眠時間は5.2~8.4時間,睡眠時間のばらつきは0.4~2.1時間だった.
- 平均睡眠時間はFMDともPLMとも相関がみられなかった.
- 睡眠時間が不規則なほど,PLMに関係するうっ血,充血が多くみられた.
- この結果は,性別,BMI,血圧,運動量,アルコールやカフェインの摂取量,睡眠時間を調整してもなお確認された.
みたいな感じだったそう.要するに,睡眠時間が不規則だと,微小血管の機能が低下しちゃうってこと.睡眠時間がばらばらだと,最大で45%PLMの機能の低下が確認されたそうで,恐ろしいですなー.微小血管の機能ってのは,そのまま血管系のリスクのバイオマーカーとして使われるやつですから,つまり睡眠時間の不規則性がそのまま心血管疾患のリスクにつながってしまう可能性があるってことです.
研究チーム曰く,
微小血管の機能低下は心血管疾患の臨床的な現れに先行することを考慮すると,我々の発見は,一貫した睡眠時間をとるように促すことが心血管疾患の第一の予防として新奇な戦略と考えられるかもしれないことを示唆している.
とのこと.心血管系のリスクを下げるためにはまずは睡眠時間を規則的にするのがいいかもよってことですな.
もっとも,睡眠時間の長さそのものは血管の機能に影響してなかったって点は先行研究と矛盾してたりして,そこのところは謎だったりします.実験のために睡眠時間を調節したりして,普段と睡眠時間が増減してしまうのが問題だったりするんでしょうかね.この辺については,
我々の発見は,習慣的な睡眠の質よりも,サーカディアンリズムのほうが,少なくとも健康な若者にとって,血管のホメオスタシスのために重要なのかもしれないということを示唆している.
とコメントしていて,やっぱり時間そのものはあんま関係ないのかもしれないってことですな.確かに狩猟採集民族を対象に行われた調査なんかでも,彼らは実際6時間くらいの睡眠でも十分健康だったりして,睡眠時間そのものは実はあまり関係ないんでしょうか.
とはいえ肥満とか頭痛とかガンとかいろんなリスクが睡眠不足には確認されているのも事実.なんで,睡眠リズムを規則的にすれば睡眠時間は短くても大丈夫!とは言えませんが,無理のない範囲で睡眠リズムを整えるように意識してみるといいかもしれません.
参考になれば幸いです.質問やコメントなどありましたらTwitterなどでご連絡いただけると嬉しいです.
それではっ!
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