今回は、勉強に関する2つのテーマについて。
一つは、エクスプレッシブライティングで、子供の不安が減って、数学のテストの成績が向上するかという話。
もう一つは、男女別で得意な科目や評価方法による成績の違いの話。
では早速行きましょう。
エクスプレッシブライティングで、子供の不安減少がして成績アップ?
まず、そもそもエクスプレッシブライティングがなにもんか軽く説明しときます。
エクスプレッシブライティングっていうのは、自分の内側の感情を紙とかに書き出すという方法で、これによって頭の中でさまよっていた不安とかネガティブな感情がすっきりして、勉強とか自分が今やるべき作業に集中できるようになるというやつです。
シカゴ大学等の研究(R)では、10歳から12歳の子供を対象に、エクスプレッシブライティングによる不安の減少と算数の成績の変化について調べられました。
今までは、大学生とか大人が対象であることが多かったので、子供たちにも同様に効果があるのかを調べたわけです。
その結果は、
- エクスプレッシブライティングを行ったグループでは、コントロール群に比べて、より大きな不安感を示し、算数の成績にも低下がみられた。
- 成績がよく、優れたワーキングメモリを持っている子ほどエクスプレッシブライティングによる学習に対するネガティブな影響が大きくみられた。
ってことで、大人の時にはポジティブな影響ばかりがみられていたけれど、子供たちの場合にはむしろ逆効果だったということがわかりました。
チーム曰く、
不安を除去するメカニズムは、不安に根気強く耐えることを避ける、制御スキルに依存している。それは、多くの若者や大人にはかなり備わっているが、早期の発達段階には、十分に備わっていない。
ってことで、大人は、勝手に頭の中で反芻していた漠然とした不安感を書き出してはっきりさせることで、不安感から解放されるのに対して、子供は、漠然とした不安感がはっきりしてしまうことによってより不安が大きくなって、とらわれてしまうのかもしれないと考えられます。
もちろん追試等が必要ではありますでしょうが、必ずしもエクスプレッシブライティングが万人にポジティブな影響のみをもたらすということではないのかもしれません。
大人の方でも、同様に、より不安感が強くなる可能性もありますので、エクスプレッシブライティング前後で、自分のメンタルの状態をチェックしてみるといいと思います。
性別による成績の違い
男性は、理系的な要素が強く、女性は感情的、文学的な学問が得意というイメージは昔からあって、実際、私自身が通っている大学でも、文系学部の男女比がほぼ半々だったりするのに、理系学部では、女子はクラスに一人だけ、ということが普通にあります。
もちろん、女性の方が能力が劣っているということはないと思いますが、やはり脳の構造上、得意な分野と苦手な分野があるということは十分考えられます。
もちろん努力でカバーできないほどのものではないと私は思っておりますが。
パリ第7大学等の研究では、23451人のフランス人学生を対象にして、男女の成績の違いが調べられました。
その結果は、
- フランス語のDNB試験の成績は、女子がM=0.18であったのに対して、男子が-0.21だった。
- フランス語の教師の評価は、女子がM=0.20であったのに対して、男子が-0.22だった。
- フランス語の標準テストの成績は、女子がM=0.09であったのに対して、男子が-0.09だった。
- 数学のDNB試験の成績は、女子がM=-0.05であったのに対して、男子が0.05だった。
- 数学の教師の評価は、女子がM=0.03であったのに対して、男子が-0.03だった。
- 数学の標準テストの成績は、女子がM=-0.19であったのに対して、男子が0.21であった。
ってことで、概して、女子はフランス語が得意で、男子は数学のほうが得意ということがわかります。
もっとも、女子は、科目に限らず、教師の評価は高く、それは、フランス語より数学のほうが影響が大きく出ています。
教師の評価はどうしても主観が入ってしまうので、バイアスとかがかかわってしまうのでしょうね。
男女の科目別の能力の違いというものは存在していなくて、本当は評価の不平等によって学習が妨げられている可能性も示唆されています。
たしかに客観的にはできていないのにできていると思い込まされたらもう努力しませんしね。
参考になれば幸いです。それではまた。
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