文部科学省の調査によれば、日本人のうち、過去5年間にボランティア活動をしたことがある人は約3人に1人だそうです。また、ボランティア活動に興味を持っている人は、8割以上にも上るそうです。海外でもボランティア活動を行っている人は多くて、特に大企業の偉い人とか、お金持ちの人とかも良くボランティア活動に参加しているということもよく耳にします。
でも一体、なんでそんなに多くの人が、ボランティア活動に参加したいのでしょうか。人の役に立つことがうれしいのか、新たな人間関係を求めているのか、考えられる理由はいくつかありますが、人は、どのような理由でボランティア活動に従事しているのでしょう。それがわかれば、ボランティアを必要としている人や団体にとっても、募集のしかたを工夫することによって、より効果的にボランティアを集めることができるようになるかもしれません。
マドリード・コンプルテンセ大学のシステマティックレビューでは、48の研究から、合計2万人以上のボランティア活動に対するモチベーションを調査し、まとめてくれておりました。
当レビューでは、以下の6つの観点からボランティア活動に対するモチベーションを調査しておりました。
- 価値観(利他主義、人道主義的な価値観の表現)
- 理解(知識やスキル、経験等の習得、向上)
- ソーシャル(社会への順応、適応)
- キャリア(特定の分野の理解の向上)
- 保守(エゴを守り、問題からの逃避)
- 向上(自己認識、自己に対する評価の向上)
主に想定されるモチベーションを以上のようにまとめて、このうちのどれがどのくらい、人々のボランティア活動に対するモチベーションになっているかを調べたわけです。
その結果、ボランティア活動に対するモチベーションとして高かったものから順に並べると以下の通りになります。
- 価値観(M=5.21)
- 理解(M=4.26)
- 向上(M=4.22)
- ソーシャル(M=3.61)
- キャリア(M=2.89)
- 保守(M=2.82)
ってことで、「価値観」、つまり「人助けの精神」でボランティア活動を行っている人が一番多くて、この結果は、ボランティア活動の種類によっても概して変わりはありませんでした。
もっとも、属性別でみてみると以下のような結果を得られました。
- 40歳以下のボランティア参加者はそれ以上の年齢の参加者に比べて、「キャリア」「理解」の部門でのモチベーションが高かった。
- 女性のボランティア参加者が少ない研究では、そうでない研究に比べて、「ソーシャル」の部門でのモチベーションがより高く確認された。
ということで、若いボランティア参加者は、自分磨きとか、自分の成長のために参加している人が多く、女性は、男性に比べて「ソーシャル」の分野でのモチベーションは高くないのかもしれないということですね。
若い人は、やっぱり自分の成長のモチベーションが高くて、男性は、女性に比べて社会との関係性を理由にボランティアに参加する。彼らは何か無償の奉仕活動というボランティアの定義自体からは少しそれた別の目的を持って参加している。一方、年齢を重ねた人、女性は、シンプルに人助けのためにボランティアに参加する人が多い。なんとなくわかる気がしますね。
果たしてボランティア活動に現在参加しているあなた、参加しようとしているあなたは本当はどんな目的をもっているのでしょうか。別に人助けの精神が一番の目的ではないからいけないとか、その他の目的が混ざっているからよくないとか、そういうことを言うつもりはさらさらありません。ただ、自分の活動に対する本当の目的、モチベーションを把握していれば、よりよい成果や結果をボランティア活動から獲得できるかもしれませんし、活動への取り組み方も変わってくるでしょう。例えば、自分の知識を増やすのが目的なのであれば、その活動の主催者とか、頻繁に参加している人と積極的に交流する、といった選択が目的達成のために有効であるなどと考えられるでしょう。
また、前にも述べたように、ボランティアを必要としている人や団体の方は、どのような人に中心に参加してほしいのかによって、募集要項でのキャッチコピーを変えたりすれば、効果的にボランティアを集められるかもしれません。例えば、力仕事が必要になるような仕事では、若い男性をターゲットに、獲得できる知識やスキルを強調するのがよいかもしれない、ということが考えられます。このようにすればWin-Winの関係を築くことができましょう。
参考になれば幸いです。それではまた。
References
- 文部科学省 『ボランティア活動に対する国民の意識の概況』
- Fernando Chacón et al. 2017 "Volunteer Functions Inventory: A systematic review".