学習

動物の赤ちゃんの画像を見れば注意力が向上する!という実験の話。

動物の画像や動画はとても癒されるもので、私もよく猫の動画をまったり見ていますし、作業用のデスクの上にも猫の写真を飾っています。動物の画像や動画の中でも動物の赤ちゃんの画像や動画は特にかわいらしくて、何とも言えない幸福な気持ちに包まれます。(余談ですが、日本語の「かわいい」という言葉は、アヴリル・ラヴィーンの曲で使われていたりして、世界的にも有名な言葉になってきています。)


このような気持ちは、動物の赤ちゃんを見ることで、人間の子育て本能が刺激されることによって愛があふれて、気分が向上すると考えられていたりするのですが、赤ちゃんの画像や動画を見ると人間の気分だけでなくて、行動の面ではどのような効果を及ぼすのでしょうか。


広島大学の実験では、3つの実験を通して、動物の赤ちゃんの画像を見た後の作業パフォーマンスへの影響について調べておりました。


実験1

  • 対象は、48人の大学生。
  • 2回、手先の器用さが要求されるような子供用のゲームをプレイしてもらい、1回目と2回目の間にランダムに子犬や子猫の画像または大人の犬や猫の画像を見せて、ゲームのパフォーマンスがどのくらい向上するかを測定する。

かわいさの異なる画像を見せられることによって、人間の注意力、集中力等がどのくらい高まるのかを検証したわけですね。ちなみにゲームのパフォーマンスとは、1回のゲームに14回セットがあって、そのうちのいくつで成功したか、また、どのくらい時間がかかったかをもとに測定しておりました。


その結果は以下の通り。

  • まず、総じて子犬や子猫の画像を見た方がよりかわいさを高く評価していた。
  • 子犬や子猫の画像を見たグループのほうは、パフォーマンスが43.9±10.3% 向上していたのに対して、大人の犬や猫の画像を見たグループでは、11.9±5.5%向上していた。


ということで、子犬や子猫との画像を見た方が、4倍近くのパフォーマンスの向上がみられたということですね。慣れもあるでしょうから、多少の向上は予想できたとしても、この数字は非常に大きな意味を持つのではないでしょうか。子犬や子猫の画像を見ると、慎重さをより高く持って、作業できるようになったわけです。


もっとも、研究チームが仮説の一つとして考えたように、それが、手先の器用さが求められる作業だったから、より慎重に作業することができて、パフォーマンスの向上がみられた、ということであれば、他の作業においてはパフォーマンスの向上は見られないのではないのでしょうか。


ということで行われた、次の実験を見てみましょう。

実験2

  • 対象は、実験1とは異なる48人の大学生。
  • 手先を使うような作業ではなくて、画面上の点を探すような、視覚を使うような作業をしてもらう。2セット目の作業の前に、子犬や子猫の画像、大人の犬や猫の画像、すしやステーキといった食べ物の画像の3種類のいずれかをランダムに見せられて、パフォーマンスがどれほど上昇するか測定する。

実験1では、手先の器用さ、慎重さが要求された作業であったのに対して、実験2では、視覚の注意力が特に必要とされるような作業をしてもらったわけです。さらに、一般に多くの人が好物と考える食べ物の画像を加えることによって、動物と、動物以外の喜びを感じるようなものとの比較も可能になっています。


その結果は以下の通り。

  • 子犬や子猫の画像を見たグループでは、15.7±2.2%、大人の犬や猫の画像を見たグループでは、1.4±2.1%、食べ物の画像を見たグループでは、1.2±2.1%のパフォーマンスの向上がみられた。

ということで、子犬や子猫の画像を見たグループの圧勝という結果になりました。個人的には、大人の犬や猫の画像を見たグループの結果が意外で、食べ物のグループと同程度だったことに驚きました。


この結果から、パフォーマンスの向上は、一般的な喜びとかのポジティブな感情ではなく、「かわいい」という感情が大きな原因となっていることが示唆されています。


最後の実験では、かわいさが、本当に影響しているのかを再現するために行われました。

実験3

  • 参加者は、実験1,2のいずれにも参加していなかった36人の大学生。
  • 参加者には、特定の文字がモニターに表示されたら反応してもらうようなゲームに取り組んでもらい、プレイの前に、子犬や子猫の画像、大人の犬や猫の画像、ニュートラルな画像のいずれかを見せて、パフォーマンス高さを測定する。

その結果、指定された文字の種類によって、反応速度に違いはあったものの、やはり、子犬や子猫の画像を見たグループは、一番大きな反応速度を示した。

まとめ

以上の3つの実験から、よりかわいらしさを感じる画像を見ることで、注意力が必要とされる作業でのパフォーマンスが向上することがわかりました。


生理学的なメカニズムはまだはっきりしていなかったりとか、万人に対して同様の結果をそのまま用いることができるかどうかは明らかではありませんが、十分参考にはなるでしょう。


特に、私を含めて動物が好きな方にとっては、少なくとも気分の上昇は期待できるでしょうから、集中力や注意力が必要とされる作業の前に少しの時間、動物の赤ちゃんの画像を見てみるのはありだと思います。


勉強とか仕事以外でも、車の運転とか、日常的な行動においても、注意力の向上によって、命の危険を回避できる可能性すらありますから、使いどころは少なくないのかもしれません。


参考になれば幸いです。それではまた。

Preference

  1. Hiroshi Nittono. et al. "The Power of Kawaii: Viewing Cute Images Promotes a Careful Behavior and Narrows Attentional Focus"(2012)
  2. Guéguen N. et al. "Domestic dogs as facilitators in social interaction: an evaluation of helping and courtship behaviors."(2008)

-学習
-, , , ,

© 2024 おくさんずラボ Powered by AFFINGER5