運動

運動をすることで不安をコントロールできる!というメタ分析の話。

昨日はヨガの呼吸法でメンタルをコントロールするという話でしたが、今回は、運動によるメンタルのコントロールについて考えてみたいと思います。呼吸法や瞑想と、運動のうち、始めやすいものから手を付けてみればいいと思います。


現代では、不安とか、精神的に不安定になってしまう人が増えていて、アメリカなんかでは、3分の1の大人が人生のどこかで不安障害になるといわれていたりします。不安障害とは診断こそされなくても、日常的に不安や心配といったネガティブな感情を抱かずに一生を終える人はほとんどいないでしょうから、他人ごとではないわけです。


実際に不安障害と診断された人の中でも、その事実を認めなかったりして、薬物治療を拒絶したりとか、セラピーを受けない人も少なくありません。単に嫌だという気持ちのせいだけではなくて、経済的な問題とか、時間的な制約という点も原因の一つといえるでしょう。また、薬物治療となれば副作用の心配もあるわけです。


一方、運動で不安障害を克服できるとなれば、自宅で自分の好きな時間にお金もかけずにできて、副作用もなく、むしろ以前より健康になれるかもしれないのですから、有益でしょう。でも、そもそも運動が本当に不安の克服に効果があるのか、あるとして、どの程度の運動が必要なのか、気になるところです。


それを解決してくれるヒントになりそうなのが今回紹介するメタ分析です。


この研究では、15の研究から、合計675人を対象にして、不安に対する運動の効果について調べてくれています。9つの研究では、不安障害と診断された人を対象に、6つの研究では、高度の不安レベルとされる人を対象にしています。そして、10の研究が、運動自体に効果があるのかを調べたもの、5つの研究が、高強度の運動と低強度の運動の効果の違いを調べたものとなっております。


運動の頻度はそこまで多くはなくて、一日20-30分程度、週に2,3回のものが多く含まれておりました。期間としては、2週間から10週間程度のものが多く含まれました。


その結果は以下の通り。

  • 運動をしたグループは運動をしなかったグループと比べて効果量が-0.41(95% CI = − 0.70 to − 0.12)。
  • 高強度の運動をしたグループは、低強度の運動をしたグループに比べて効果量が、-0.38(95% CI =-0.68 to -0.08)。
  • その効果について、不安障害と診断された人と、不安レベルが高い人との間で各段差はなかった。

ということで、運動をした方が不安を克服することができ、さらに高強度の運動をした方が低強度の運動よりも不安をより克服することができたというわけですな。ここでいう高強度の運動というのは、最大心拍の60-90%の運動を示しています。


さらに、高強度の運動をした人たちは、その効果が数か月以上続いていたことが確認されていて、その効果は一時的なものに過ぎないというわけではないことが示されています。とはいえ、高強度の運動をしたグループではドロップアウト率が高く、そもそも実行すること自体が容易ではないことがわかります。適度に継続できるレベルの運動がベストなのでしょうね。


チーム曰く、

運動は、不安に対する効果的な治療であることがわかった。運動は、一般的な治療方法として、もっと推奨されるべきだ。

ということで、運動が不安のレベルにかかわらず有効な対策であって、高強度の運動ならよりよい、ということが示唆される内容となりました。不安に陥っている人の特徴として、反芻思考(同じことを何度も何度も頭の中をめぐる思考のこと)が問題とされていますが、高強度の運動をすることによって、ネガティブな思考を止めざるを得ない状況になりますから、それによって、反芻思考の弊害が減少されているのかもしれません。


なので、不安対策の一つの武器として「運動」という選択肢を持っておくとよいかもしれません。強度はできるだけ高強度にした方がいいのかもしれませんが、継続できなけば元も子もないので、出来る範囲で行っていくのがよいでしょう。また、不安に陥る前に運動を習慣化してしまうのもよい方法だと思います。


参考になれば幸いです。

それではまた。

references

  1. Elizabeth Aylett et al. "Exercise in the treatment of clinical anxiety in general practice – a systematic review and meta-analysis".(2018)

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